北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】防衛省-無人水陸両用車開発開始と新地対艦・地対地精密誘導弾開発開始と対空電子戦装置取得開始

2024-03-05 20:24:46 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 新たな重要装備品等の選定結果について。

 防衛省は無人水陸両用車の開発を開始します。これは“新たな重要装備品等の選定結果について”という令和6年1月25日に公開された文書において示されたもので、三菱重工が開発を進めている水陸両用車を元に無人型を開発するもようです。陸上自衛隊の水陸機動団は現在AAV-7両用強襲車を装備していますが、設計が古く暫定的な装備といえる。

 無人水陸両用車は、珊瑚礁など我が国島嶼部における敵部隊着上陸後の占領地域へ投入するものですが、現在装備されているAAV-7では水上速度は17km/h、水陸両用車としてはかなりの速度ではありますが、遮蔽物の無い海上を敵前で行動するには、他戦車ミサイルや戦車砲などあらゆる脅威に対して低速であり、装甲防御力も脆弱といわざるを得ない。

 三菱重工の水陸両用車は、凌波装置を全面に展開し抵抗を最小限とする事で高速航行を可能とさせる設計ですが、防衛省の新しい装備開発は、第一波などを無人とする事で敵に撃沈された場合でも損耗を最小限とし、水陸両用部隊の第一波が事実上の威力偵察であり、大きな損耗を度外視している運用から脱却する事がその開発目的と考えられます。■

 防衛省は無人水陸両用車の開発を重要装備品に位置付けています。重要な点は、現在開発されている水陸両用車について、その無人化を進める背景と共に国産開発が決断された背景です。防衛省でゃ、機動性能と無人化の実現性の双方に要点を絞り事業評価を行ったうえで、実現性があるとし、令和6年度予算案に開発関連費を計上したと説明しています。

 無人水陸両用車の生産単価は8億8000万円を見込んでおり、量産された場合のライフサイクルコストは2822億円と見積もっているとのこと。ただ、防衛省の発表では8億8000万円という生産単価をどの程度量産した場合としたのか、算出根拠は示しておらず、選定段階における見積りだと説明、ライフサイクルコストについても同様に暫定的な見積もり。

 AAV-7よりも高速航行が可能であるとしつつ、しかし輸送は無人化する背景には水陸両用作戦における輸送の危険性を示したものですが、同時に着上陸後の後方連絡線を無人装備により維持するという意思の表明でもあります。一方、この種の装備は沿岸部の災害派遣などにも有用であり、人員輸送なども可能、南海トラフ地震での活用が期待されます。■

 防衛省は新地対艦・地対地精密誘導弾の開発を開始します。これは令和6年1月25日開示の“新たな重要装備品等の選定結果について”において示されたものです。88式地対艦誘導弾や12式地対艦誘導弾の後継となる装備で、現在12式地対艦誘導弾は射程を900km以上に大幅に延伸した改良型を開発中ですが、この装備はそれに続く新装備です。

 新地対艦・地対地精密誘導弾について防衛省は、脅威対象による迎撃が一層困難な先進的スタンドオフミサイルとして位置付けられているとのことで、離島に配備するだけではなく、九州や本州などに配備し離島周辺への敵に対し投入できる程度の非常に長い射程が見込まれているもよう。また飛行場施設や揚陸艦など点目標や移動目標に対し有効という。

 88式地対艦誘導弾以来の地形追随昨日を保持する他、ミサイルそのものに残存性という機能が求められており、相手の迎撃を回避する能力が求められている。これはミサイルをステルス設計とする、また速度を超音速とした上でシースキミング性能を付与させるなどの選択肢が考えられます。計画のライフサイクルコストは5165億円に達するとの事でした。■

 防衛省は対空電子戦装置の取得を開始します。令和6年1月25日開示の“新たな重要装備品等の選定結果について”によれば、量産単価は約28億円、ライフサイクルコストは10基取得の場合で約459億円を見込んでいるとのこと。八輪式車両に大型のパラボラアンテナを搭載したもので、一見、東宝特撮映画のメーザー砲のような形状の装備です。

 対空電子戦装置は新編される対空電子戦部隊に装備し早期警戒管制機等に対し電波妨害を展開しレーダ機能を喪失させ無力化するというもので、東宝特撮映画のメーザー砲のような形状の装備ですが用途はAサイクル光線車のような装備となっています。この装備は既に令和2年に完成し、評価試験を実施、一連の評価を経て令和6年度予算に盛り込まれた。

 電子戦装備は領域横断作戦に必要な装備体系となっていますが、各国が輸出市場に供給している電子戦装備はドローンを筆頭とした小型無人機やランセットドローン対策のものが中心となっており、数百km先の早期警戒機の索敵能力を標的としたものは輸出市場には多くありません。これが国産による量産取得決定に大きく影響したと考えるべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-A50メインスティ早期警戒管制機相次ぐ撃墜とSu-34戦闘爆撃機など損耗増大

2024-03-05 07:01:41 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 早期警戒管制機、日本の場合は小回りが利くE-2CやE-2Dを前線航空作戦に展開させE-767は後方の全般防空を担うという運用ですがロシアの場合は。

 ロシア航空宇宙軍はA-50早期警戒管制機の実戦運用を停止している、イギリス国防省ウクライナ戦況報告3月2日付発表が状況を解説しました。これによれば2機の撃墜と先んじて発生している地上撃破、相次ぐA-50早期警戒管制機の喪失により、ウクライナ作戦への参加を一旦停止し、A-50早期警戒管制機を運用できる状況を精査するものと推測します。

 A-50早期警戒管制機の運用を再開するには、ウクライナ防空砲兵部隊による長距離地対空ミサイルへの対策や立て続けに喪失した事に対する運用上の問題点などの内部調査が完了するまで、再度ウクライナ作戦へは投入されないものとイギリス国防省は推測しています。しかし、現代航空作戦に必須の早期警戒管制機を欠く事は非常に大きな問題を突き付ける。

 早期警戒管制機は文字通り高高度から広範囲の航空情報を収集管理しまた防空作戦を指揮する事となりますが、同時に攻勢航空作戦における航空部隊指揮統制にも必要な航空機であり、A-50早期警戒管制機が進出しない事により、ウクライナ上空において作戦に当るロシア軍戦闘機などは周辺の状況認識能力をかなり制限されることは必至となるでしょう。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 昨年航空自衛隊が中国とロシアの戦爆連合編隊に緊急発進したところアクロバット塗装の北が混じっており戦闘機不足を痛感させたことがありましたが。

 ロシア空軍機はこのところ相次ぐ戦闘機喪失にもさらされています。特に損害が拡大しているのはSu-34戦闘爆撃機で、2月17日にはSu-34戦闘爆撃機2機とSu-35戦闘機1機が喪失、2月18日にはSu-34戦闘爆撃機1機、2月19日にはSu-34戦闘爆撃機1機とSu-35戦闘機1機喪失、2月21日にSu-34戦闘爆撃機1機、と立て続けに喪失しています。

 ウクライナ国防省の発表では2月23日にはA-50早期警戒管制機が撃墜され一旦小康状態となりますが、2月27日にSu-34戦闘爆撃機2機喪失、2月29日にはSu-34戦闘爆撃機が3機が撃墜されました。これによりSu-34,Su-35だけで12機が二週間弱で喪失したこととなり、開戦以来温存されてきた第一線級戦闘機の喪失が急増している状況となりました。

 戦闘機多数損耗の背景にはウクライナ軍ペトリオットミサイルなどの防空砲兵の活躍と共に、ロシア軍は高高度を飛行する戦闘機からの滑空爆弾投下を劇的に強化しており、しかしその分は高高度を飛行する為に地対空ミサイルからの回避が低空飛行の場合と比較し格段に難しくなっており損耗が増大したという分析も。戦闘機の補填は容易ではありません。

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