北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】AUKUS原子力訓練,45型防空駆逐艦の能力向上改修と中型揚陸艦RFI提案要請書,イスタンブール級フリゲイト

2024-03-18 20:02:54 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題を集めてみました。造船技術の各国普及と共に全通飛行甲板型艦艇の拡散や水上戦闘艦とミサイル関連技術の拡散などが新しい趨勢となっています。

 オーストラリア海軍は127mm艦砲の近代化改修を行うもようです。これはオーストラリア海軍が保有するアンザック級フリゲイトについて、オーストラリア国防省とBAEシステムズ社が現在運用しているMk45-Mod2-127mm艦砲のCCS共通制御システム追加搭載について契約に至ったとのこと。Mk45-Mod2はMk45-Mod4相当に改修されます。

 Mk45-Mod2のMk45-Mod4水準への改修について、BAE社は127㎜艦砲システムの寿命延伸には最適であるとし、特に開発中の射程延伸精密誘導砲弾や超高速発射体などの改良型砲弾に対応させることで陳腐化を防ぐ目的があり、外見からの端的な発展として砲身が現在の54口径から62口径の長砲身へ換装される事で識別が容易となっています。

 アンザック級はオーストラリア海軍が哨戒任務を念頭にドイツの輸出用フリゲイトMEKO-200フリゲイトの設計を応用し1996年から2006年にかけ8隻を取得しました。満載排水量3600tとコンパクトにまとめているのが特色ですが、近年でもCEAFAR多機能レーダーの搭載など、その能力向上が精力的に進められている水上戦闘艦です。
■輕型巡防艦対潜型
 台湾の新型艦、大きさは本邦あぶくま型護衛艦より若干大きくしかし護衛艦はつゆき型には及ばないという規模の模様ですね。

 中華民国伊台湾海軍は新型の輕型巡防艦対潜型の起工式を行いました。もともと濟陽級ことノックス級フリゲイトなどの後継艦を目指す震海計画が進められていた台湾ですが、中国海軍の大型水上戦闘艦増強が異常な速さで進んでいた為に先ずは数を揃える必要が生じ、満載排水量3000t程度の比較的小型の艦を建造することとなりました。

 輕型巡防艦は先行して2023年11月に防空型が建造開始、海剣二型艦対空ミサイル16発と雄風二型艦対艦ミサイル8発を搭載する、射程30㎞の艦対空ミサイル16発ということになりますから、防空というよりは僚艦防空能力を持つ水上戦闘艦として建造されています。そして今回起工式を迎えたのは対潜型で、先ず試作艦として完成させるもよう。

 輕型巡防艦対潜型は曳航型ソナーシステムと対艦ミサイルなどを搭載するという。満載排水量は3100tで基準排水量2500t、76mm艦砲に加えミサイルとそしてS-70クラスの哨戒ヘリコプターを搭載可能、乗員は85名を予定しています。濟陽級巡防艦は現在6隻運用中ですが、台湾では輕型巡防艦防空型6隻と輕型巡防艦対潜型6隻で置き換えます。
■AUKUS原子力訓練
 オーストラリア原潜導入へ向けとりあえず最初の三名と。

 オーストラリア海軍から初のAUKUS原子力訓練修了者が誕生しました。通常動力潜水艦導入計画を原子力潜水艦導入計画に切り替えたオーストラリア海軍は、ラロトンガ条約などの関係で国内に原子力専門家がほとんどいないために原子力要員養成を一から臨んでいて、NPTUアメリカ国原子力訓練部隊プログラムへ要員を派遣していました。

 NPTUアメリカ国原子力訓練部隊プログラムを修了したのはヘイドン中佐とクライン中佐とホール中佐の3名で、アメリカでも最も厳しい訓練の一つと位置付けられる課程を修了したとのこと。もともとNPTUは原子力事業者が電力学校での知識と理論を実際の発電所の運転と監視能力に応用する教育課程の潜水艦原子炉運用へ応用させる課程です。
■アマトカミサイル
 インドネシアも装備国産化に注力していますが貴重な外貨を削って外国からの兵器にゾンしたくはないという点は理解できる。

 インドネシアのPTリパブリックディフェンシンド社はアマトカ艦対艦ミサイルライセンス生産を開始します。これはインドネシア海軍が水上戦闘艦搭載用にPTリパブリックディフェンシンド社とのあいだで45発のアマトカ艦対艦ミサイル製造契約を結んだもので、アマトカ艦対艦ミサイルはもともとはトルコのアセルサン社が開発したもの。

 アマトカ艦対艦ミサイルはトルコ海軍がハープーン艦対艦ミサイルの後継装備を国産化する試みで開発されたもので、射程220㎞、亜音速で飛行しハープーンミサイルの225㎏に匹敵する220㎏の弾頭重量を有するとされています。既に2021年からトルコ海軍には配備されていますが、インドネシアにライセンス生産が許可されることとなりました。
■長射程型のブラモス
 元々は航空機搭載用という。

 インド海軍は長射程型のブラモス超音速ミサイル発射実験に成功しました。これはインド海軍が1月24日に実施したもので海上から遠距離の地上目標を攻撃したもので、実験されたブラモスの射程は900㎞型であったとのこと。映像から試験に使用されたものはラージプート型ミサイル駆逐艦で、試験は二日間にわたり試験空域を設定しました。

 ブラモスミサイルはロシアの技術供与を受け開発されたもので、P-800オニクス超音速対艦ミサイルの技術が応用されています。ブラモスはインドのブラマプトラとロシアのモスクワから名称を冠したもの、もともとはSu-30戦闘機からの空対地ミサイルとして開発されていましたが、艦載型や地対艦ミサイル型など様々な派生型が開発されています。

 ロシアとともに共同開発されたミサイルは射程が800㎞となっていて、今回試験されたものは少なくとも100㎞の射程延伸に成功した事となります。しかしインド国防相は空対地型や艦載型と地対艦型のブラモスシリーズを射程1500㎞まで延伸する次世代型を開発しており、今回の射程延伸型も全体から見れば試験の一環と言えるかもしれません。
■中型揚陸艦
 アメリカも島嶼部防衛強化へ大わらわだ。

 アメリカ海軍は中型揚陸艦に関するRFI提案要請書を発表しました。海軍作戦参謀長で海軍遠征戦部長であるマーカスアニバレ海軍少将は新型揚陸艦について、海軍と海兵隊水陸両用部隊にとり最優先事項と位置付けていて、2024年1月に発表された提案要請書では、海軍は2025年建造開始で2029年竣工、最大6隻の揚陸艦を建造する構想です。

 RFI提出期限は2024年5月4日となっています。海軍がこの揚陸艦を重視する中において、その最大の背景は中国を念頭とした海兵沿岸連隊をどのように移動させるかという点で、もちろんKC-130J空中給油輸送機も活用するが海上輸送の重要性も高いとしています。こうした観点から揚陸艦は3000浬から5000浬の航行能力が求められる。
■補給艦デリヤ
 艦艇が大型化すると補給艦も大きくなるのは日本も同じ。

 トルコ海軍は新補給艦デリヤを竣工させました。1月19日にヤロバに所在するセフィーネ造船所において行われた竣工式では、エルドアン大統領を筆頭に国防大臣と参謀総長らが出席、新しい補給艦の竣工を祝いました。そうそうたる竣工式となりました背景には、補給艦デリヤが、トルコでは強襲揚陸艦アナドルに続く第二の巨艦であるゆえ。

 補給艦デリヤは満載排水量26115t、その能力としては燃料を10000tと真水750tを搭載し、貨物については270立方mを積載可能、その全長は199mに達します。LM2500ガスタービンエンジンとディーゼルエンジンの併用により速力は24ノットと補給艦としては高速、トルコ海軍の戦力投射能力を高める事がきたいされています。
■SSV戦略海上輸送船
 大きくはないが小さくも無い。

 フィリピン海軍向け124m型ドック型揚陸艦建造が開始されました。インドネシアのPT-PAL社において、ドック型揚陸艦の建造が開始され、これはSSV戦略海上輸送船として位置づけられています。近代的な海軍を持たなかったフィリピン海軍は現在、中国脅威を背景にホライゾン計画として海軍力の整備を進めており、その要諦のひとつ。

 SSV戦略海上輸送船、今回建造が開始されたのは3番艦にあたり、インドネシアのスラバヤにおいて進められています。建造費は55億6600万ペソ、ただ、2番艦までと比較し新しい揚陸艦は輸送艦能力と共に76mm艦砲1基と30mm機関砲2基を備え、格納庫に10t級ヘリコプターを搭載可能という点で、より多用途任務を想定している新型艦だ。
■イスタンブール級
 おおきさてきに韓国初の大型水上戦闘艦であるクワンデドゲワン級を少し小さくした感じ。

 トルコ海軍は新フリゲイトイスタンブールを竣工させました。MILGEM国家水上戦闘艦計画に基づいて建造されたイスタンブール級フリゲイトの1番艦で、トルコ北西部のヤロヴァ県に所在するセフィーネ造船所において執り行われた竣工式典にはトルコのエルドアン大統領を筆頭にトルコ政界や産業界の要人が並びました。

 MILGEM国家水上戦闘艦計画とは、もともとトルコ海軍艦艇は長らく海外技術への依存が高く、トルコ初の近代的戦艦であるヤウズ級戦艦から西ドイツによる現在主力のヤウズ級フリゲイトまで一貫していました。今回のMILGEM国家水上戦闘艦計画ではトルコ国内で80%を製造し220社のトルコ企業、下請けに更に80社が参画し建造しています。

 イスタンブール級フリゲイトは全長113.2mで全幅14.4m、満載排水量は3100tでガスタービンディーゼル併用方式を採用、武装は76mm艦砲とアトマカ対艦ミサイル16発にSAPAN艦対空ミサイルをVLSに16発、35mm双連機銃に25mm近接防空火器と短魚雷及びヘリコプターを搭載していて、現在4番艦までの建造が予定されています。
■45型防空駆逐艦
 45型は性能というよりも長期航海を想定したばつぐんの居住環境を自衛隊も見習うべきと思う。

 イギリス海軍は45型防空駆逐艦の防空能力を向上させるとのこと。これはイギリス国防省の正式発表とともに欧州ミサイル製造大手MBDA社が発表したイギリス海軍との契約に際し示されたもの。具体的には紅海において多発する商船攻撃に併せイギリス海軍が運用しているシーバイパー戦域防空システムに関する契約です。

 シーバイパーはアスター30艦対空ミサイルなどを制御し艦隊防空を担うシステムですが、今回の契約ではシーバイパーシステムの運用支援機関が5年間延長され、またアスター30艦対空ミサイルがアスター30block1へと能力向上、そして45型防空駆逐艦に搭載されているサンプソン多機能レーダーの能力向上改修などが行われるという。

 45型防空駆逐艦の能力向上改修には4億5000万ポンドがとうじられることとなり、また次世代改修として弾道ミサイル迎撃能力を有するアスター30block1NTミサイルの運用能力付与に関する拡張性を確保するのも狙いとのこと。イギリス国防省によれば一連の45型防空駆逐艦の能力向上改修は2032年までに全艦の改修を完了するもよう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ゼレンスキー大統領ミツォタキス首相首脳会談中のミサイル攻撃と新駐イギリス大使

2024-03-18 07:00:00 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 岸田総理ウクライナ訪問の際にも課題となったのは安全確保というもので一説にはそこまで緊迫する状況は無いという指摘もありましたが、現実はそこまであまくなかったもよう。

 BBC3月7日付報道によればゼレンスキー大統領が危険にさらされる事件が発生しました。事件は3月6日、ギリシャのミツォタキス首相との首脳会談中のウクライナ西部オデッサにおいて爆発が発生した、ゼレンスキー大統領とミツォタキス首相及び両国政府関係者は無事であったが、ウクライナ海軍の発表では5名が死亡したとのこと。

 ミツォタキス首相によれば、首脳会談直後の記者会見においてサイレンが鳴った直後に爆発音を聞き、避難する時間はなかった都市、非常に強烈な体験であり新聞で戦争について読むのと自分の目で見て耳で戦争を知るのとでは全く違うものだったと、記者団に語りました。両国首脳は首脳会談に先立ち、攻撃を受けた民家を視察し献花しています。

 ロシア国防省は、この攻撃は首脳会談を狙ったものではなくオデッサのウクライナ軍無人機工場を狙ったものであり目標は正確に破壊されたと発表しています。ただ、首脳会談の会場から着弾点がどの程度離れたものであるかは発表されていませんが、NATO加盟国首脳の参加した首脳会談会場付近に攻撃が加えられたこともまた事実です。
■駐イギリス大使
 ウクライナが戦い続けるにはあらゆる意味で同志国の協力により武器と財政支援が必要であるということは不変といえるでしょう。

 ウクライナ前総司令官ザルジニー将軍は駐イギリス大使へ任命されます。ヴァレリーザルジニー氏はロシアウクライナ戦争開戦以前よりウクライナ軍総司令官に着任し、キエフ防衛戦やヘルソン奪還とハリコフ反転攻勢など不可能と思われた戦いを勝利に導き、国民にも人気の熱い司令官でしたが、2月に総司令官を解任されていました。

 ザルジニー氏の解任について、ゼレンスキー大統領との不仲説が分析などで識者により示されていましたが、2023年夏季反転攻勢における作戦運用、ヘルソンとハリコフ奪還における大統領と総司令官の意思疎通、こうした重要な決定に際し、当時のザルジニー総司令官とゼレンスキー大統領の不協和音が背景にあったのではないかともいわれている。

 BBCの3月8日付報道によれば、ゼレンスキー大統領は、7日のザルジニー氏の駐英大使任命について、ザルジニー将軍は外交に取り組みたいとの意思を示し承認、7日のイギリスシャッブス国防相のキエフでの会談の際にもザルジニー将軍の大使任命を伝えた、と発表しました。イギリスはウクライナの最重要友好国、重用の表れと言えるでしょう。

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