北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

3.11東日本大震災から13年【2】胆振東部地震の広域停電・熊本地震は双子の本震・能登半島地震の想定外たち

2024-03-12 20:15:41 | 防災・災害派遣
■大規模災害と想定外
 考えたくない事を考える事が必要なのだ。

 3.11、この日に考えなければならないのは防災の日が九月一日に制定され、防災活動を通じて関東大震災と共に次の首都直下型地震への日ごろの備えの事を思い出さなければならないように、幾つもの防災と災害の経験から考えたくない事を考える、あの日多くの被害が想定外、という名のもとに忘れられていたという問題点を顧みるという一点でしょう。

 東日本大震災は、歴史地震として記録されていた貞観地震、いまでは千年前の東日本大震災と説明される事の覆い、過去の歴史、伝承を伝えられない程の間隔で発生する災害は確かに存在する、というものでした。これを考えますと、昨年発災100年を迎えた関東大震災などは、まだ、曖昧模糊とした上で災害の全体像をつかむ事が出来る間隔できている。

 想定外をなくすためには、少なくとも直近始め幾つかの巨大地震や災害などから、せめてこれだけは想定外とせぬように考えなければならない課題の洗い出しから始めるべきではないかと考えます。そう、考えてみますと13年前の東日本大震災の津波と原発事故は確かに想定外の連続ではありましたが、昨今の災害でも、定説を覆した想定外は数多い。

 胆振東部地震、2018年9月6日に発生しました地震では、広域停電、この想定外が発生しました。マグニチュード6.7で震源は23kmの深さでしたので被災地周辺は大規模な山岳崩壊などが発生し、死者数43名という被害をもたらしましたが、この地震では北海道全域が停電する広域停電が発生、復旧後も9月15日まで道内では計画停電が行われました。

 胆振東部地震での広域停電は、道内最大の火力発電所が被災した事により起った送電停止が道内の電力供給全体に影響し48時間以上にわたり離島を除く北海道内全ての電力が停止しました。この影響は低温貯蔵施設や研究施設などに回復不能の被害を及ぼすとともに、仮にこの発災が時であれば被災者の救援活動に対し影響が及んだと考えられています。

 広域停電、南海トラフ地震のような地震を想定する場合、被害範囲が非常に広く本州の広域に渡り電力インフラが使用不能となり、電力インフラに頼らない状況での初動72時間に対応しなければならない状況は起こりえないのか、電力復旧を念頭に自家発電燃料などが確保されていますが、その稼働期間の見直しなどの必要を迫るのが胆振東部地震でした。

 熊本地震、2016年4月14日に発生し死者276名、特に死者の内221名が関連死という災害で在りましたが、この地震では双子の本震というべき、震度七の激震が4月14日と16日に二度発生し、これは最初の地震が誘発したものではなく、したがって余震ではないと気象庁が位置付けているのですが、本震が時間差で圧そうという、これも想定外といえる。

 双子の本震、災害救助活動が本格化すると同時に時間差で双子の本震が被害を起こしたというもの、これにより半壊の建物が全壊し前回の建物が倒壊するなどの被害が発生しました。東日本大震災などをみますと余震により津波の警戒が必要となった点で、災害救助活動に影響を及ぼしたものですが、双子の本震という前例は、救助へ不確定要素を与える。

 能登半島地震、1月1日に発災したばかりのこの地震では、海岸隆起、という、これは正確には関東大震災でも確認されている事象なのですが、これが能登半島の広範囲において発災しました。そして、能登半島地形上陸上交通が限られる一方で漁港を中心に本来は海からの救助などが大きな意味を示すはずではあったのですが、港湾が使用不能となっていた。

 海岸隆起は、同時に海底地形崩壊により極めて短時間で沿岸部に津波が襲来し、東日本大震災の教訓であったはずの、充分に時間が有る為に一目散に避難する有用性、というものが成立たなかった、時針による海底地すべりにより数分後には到達するという、過去の奥尻島での北海道南西沖地震のような素早い津波被害、というものが発生した訳です。

 海岸隆起による海上交通阻害、一部には潮流任せでコンテナに救援物資を積み込み漂着するよう願って放流するという意見も示されたといいますが、通常の船舶が使えず、エアクッション揚陸艇など自衛隊の輸送に依存しなければ対応出来なかったという実情は、陸路が駄目な場合は海路が有る、という常識に対して想定外を突き付ける事になりました。

 こうした胆振東部地震や熊本地震に能登半島地震での教訓は、数多ある災害の一例に過ぎないのですが、問題として、今の時点でこれらの想定外の払拭がどの程度進んだのでしょうか、いや、現状のままでは南海トラフ地震が現実のものとなった場合でも、前例を忘れあれは想定外であったと踏襲しなければならないようなことは、避けなければなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア航空宇宙軍・ウクライナ空軍戦闘状況とロシア軍の新しい攻撃目標チャシブヤール

2024-03-12 07:00:12 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 戦闘機は最先端技術の結晶であると共に第一線で使用可能である航空機は高価ですがある程度の消耗を想定しなければならないという、日本にも突き付けられた厳しい戦訓だ。

ロシア航空宇宙軍とウクライナ空軍の戦闘状況について、ISWアメリカ戦争研究所の3月5日付戦況報告によれば、ロシア空軍はSu-34戦闘爆撃機がSu-35戦闘機の護衛下で一日100ソーティーの任務飛行を行いウクライナ軍陣地を攻撃しているとのこと。現在主として用いられているのは射程40㎞の滑空爆弾だとアメリカのフォーブス誌の報道が。

ロシア軍の最近の前進をささえているのは損耗を度外視した航空支援であるとニューヨークタイムズ紙の報道をISWが引用しています。ただ損耗については、高高度からの滑空爆弾投下によりウクライナ軍のペトリオットミサイル部隊による攻撃から十分な回避行動がとることも出来ず撃墜されているともいう。低空飛行の方が一般論として安全だ。
■AASMハンマー誘導爆弾
 アメリカのJDAMは優れたGPS誘導爆弾ですが射程を若干伸ばすために補助ロケットを装着しようとフランスは考えたという。

 ロシア航空宇宙軍とウクライナ空軍の戦闘状況について、ISWアメリカ戦争研究所の3月5日付戦況報告ではウクライナ側の映像公開によりフランス政府がウクライナに軍事援助を行ったAASMハンマー誘導爆弾が初めて実戦投入されたとのこと。目標はウクライナヘルソン州ドニエプル川東岸のコザチラヘリを占領するロシア軍陣地とのこと。

 ハンマー誘導爆弾はサジェム社製、通常爆弾に誘導装置と補助推進装置を装着するもので、誘導にはGPS誘導と赤外線画像誘導及び慣性誘導方式を併用します。補助推進装置はロケットモーター式のものを爆弾後部の誘導キットに搭載していて、これにより低空投下でも15㎞、高高度からの投下では50㎞を飛翔、半数必中界は1mとされています。
■攻撃正面はチャシブヤール
 砲弾と機甲装備、日本も陸上防衛を考えるならばこうした従来型の装備に回帰する必要性を突き付けられているという毎回の話題を補強する視座がまたひとつ。

 ロシア軍の新しい攻撃正面はチャシブヤール攻略である、イギリス国防省は3月7日付ウクライナ戦況報告においてロシア軍の動向分析を公開しました。チャシブヤールは昨年の激戦地であるバフムト近郊、現在戦闘が繰り広げられている前線から5㎞後方とのこと。バフムトは昨年に毎日ロシア軍死傷者900名という激戦の末5月に陥落しました。

 バフムト近郊の戦いは、ロシア軍に対しウクライナ軍がイワニフスク村とボーダニフカ村の間に防衛線を構築し、ロシア軍に対し戦線を維持しています。イギリス国防省の分析としてロシア軍は徐々に成果を上げているものの、ロシア軍の損耗や機械化装備、航空支援の限界などからチャシブヤールへの直接攻撃が行われる見通しは低いとの分析です。

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