北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】アメリカFARA将来攻撃偵察航空機開発計画中止とFLRAA将来型長距離強襲航空機

2024-03-19 20:01:57 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 期待していた次世代航空機FARA将来攻撃偵察航空機について。

 アメリカ国防総省はFARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止を決定しました。この計画は幾度も中止を繰り返していたOH-58カイオワ観測ヘリコプター後継機計画がまたしても中止されたもので、画期的な能力を有するとされたRAH-66コマンチ偵察ヘリコプターがコスト管理に失敗し一機一億ドルという状況により中止された流れの先に。

 アメリカ陸軍先進技術開発軍司令官のジェームズレイニー大将によれば、この計画中止は予算的な要素も大きいとされつつ、ロシアウクライナ戦争やイスラエルガザ報復など最新の戦況を見たうえで、今週末や今夜大規模戦争が始まる可能性がある状況では徹底した調整が必要であるために長期間を要する新型機開発は最良の選択肢ではないとした。

 陸軍参謀総長ランディジョージ大将も、ロシアウクライナ戦争において航空偵察の概念が根本から転換しており、人工衛星に搭載されるセンサーや無人航空機の能力がこれまでにないほどに広範囲に達して、そして安価になっている、と2月7日に国防総省において開かれた記者会見やプレスリリースなどで計画中止の背景を説明しています。■

 中止のFARA将来攻撃偵察航空機とは。OH-58Dカイオワヘリコプターの後継機を開発するもので、候補機としてはベルヘリコプターテキストロン社のベル360インビクタスとシコルスキーエアクラフト社製レイダーXが候補として開発されていますが、開発遅延の可能性とコスト管理の見通しの甘さなどがアメリカ会計検査院に指摘されています。

 ベル360インビクタスは攻撃ヘリコプター型の機体配置を採用しており、ベル525中型ヘリコプターの設計を応用しGE社製T-901ターボシャフトエンジンを採用、巡航速度は330km/hで、機体はタンデム複座型を採用、主翼を有する構造で対戦車ミサイルなどの運用能力を有するほか、機首には機関砲を搭載する攻撃ヘリコプター型を採用した。

 レイダーXとは、シコルスキー社が1970年代から開発している複合ヘリコプター技術を利用しシコルスキーS-97を原型として採用、GE社製T-901ターボシャフトエンジンを採用し、二重反転ローター方式により最高速度は460km/hに達する計画でした。他方、操縦席はサイドバイサイド方式を採用し、武装は胴体部分に収容する計画でした。■

 FARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止の全般に及ぼす影響について。アメリカ陸軍は同時に並行しているFLRAA将来型長距離強襲航空機については具体的な変更を示唆していません。陸軍はFLRAAについてはUH-60ブラックホークヘリコプターを置き換える次世代ヘリコプターの本命と位置付けており、今のところ継続されるもよう。

 ベルV-280ヴァローとシコルスキー/ボーイングSB-1デファイアントがこの候補機と位置付けられています。ベルV-280ヴァローはV-22オスプレイのようなティルトローター方式の航空機で海軍なども哨戒ヘリコプターの原型機として注目している。SB-1デファイアントは複合ヘリコプター、既存機のような空気抵抗を活かした匍匐機構能力をもつ。

 FLRAA将来型長距離強襲航空機は、少なくとも既存のUH-60ブラックホークと比較して大幅に巡航速度が増大するため、これらの航空機を援護するにはFARA将来攻撃偵察航空機が既存の戦闘ヘリコプターよりも高い巡航速度能力を発揮できる点が重視されていましたが、今後はこの任務も無人航空機が担う事となるのでしょうか、関心事です。■

 UH-60Vブラックホークの調達が中止される、そして今回のFARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止と同じくして陸軍は現在生産されているUH-60Vの生産を2025年に終了すると発表しました。その理由はコスト管理の失敗といい、全天候飛行能力をこれまでのヘリコプターと比較にならないほど高水準とした点が強調されていました。

 UH-60Vはノースロップグラマン社製モジュール式オープンシステムアーキテクチャーオープンリフトシステムを搭載、この技術はAH-64Eアパッチガーディアンにも採用され、コンピュータシステム、ビジュアルディスプレイシステム、コントロールディスプレイユニットとすべてをデジタル端末化し、高度な任務遂行能力を持つとされています。

 陸軍は既存のUH-60のうち760機をUH-60Vへ改修し、既存の1375機のUH-60Mと並行運用する計画を見直すとのこととなります。既存のUH-60はUH-60Lであり、今後はコスト管理に成功しているUH-60Mへの改修を強化するのか、UH-60Lをそのまま運用しFLRAA将来型長距離強襲航空機での置き換えを目指すかなどの選択肢があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア軍,ATV全地形車両増強と旧ソ連戦車戦略備蓄最大四割を既に消費

2024-03-19 07:00:25 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 戦車に随伴する歩兵は上級司令部の考え云々は別としてやはり砲爆撃に曝される以上は装甲車に乗りたいだろうなあと、さて振り返って本邦はとも。

 ロシア軍はザポリージャ州方面でATV全地形車両を増強している、ISWアメリカ戦争研究所3月7日付発表です。これはウクライナタヴリスク地区部隊報道官の発言で地雷原を踏破する歩兵車両としてATVを使用しているとのこと。この地域ではバギータイプの四輪バイクなどが戦車に随伴する映像などがウクライナ側により撮影されています。

 戦線全般の状況としては、クピャンスク郊外のシンキフカやドネツク市西方のオルヒフカとノヴォミハイリフカ付近でロシア軍は一定程度前進しているとのこと。一方防衛線建て直しに関連して、ウクライナ軍タヴリスク地区部隊報道官の発言として、アウディイフカ近郊においてロシア軍の装甲車を含む12両の攻撃を撃退したとしています。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 こうした任務は日本のように哨戒機の任務と思っていた。

 ロシア軍はイラン製マハジェル6無人機を情報収集に活用し効果を挙げている、3月8日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告が新しいロシア軍の無人機とその運用の概況分析を公表しました。マハジェル6は自爆型無人機ではなく情報監視捕捉偵察など担う固定翼無人機で、限定的な小型爆弾投下能力も有しクリミアや黒海で運用が確認されている。

 マハジェル6の運用について、ロシア軍は占領地域付近の港湾や船舶識別に用いているという。当該海域では無人艇脅威がある。性能はトルコ製バイラクタルTB-2と同じく運用基地から見通し線内に機体を置く必要はあるものの、複数の地上管制基地によりハングオーバー運用が可能とされていて、高度3000mを200㎞以遠まで運用できるという。
■戦車戦略備蓄の最大四割
 本邦も置き場所というもんだいが有るのは理解しているのだけれども古い倉庫に退役した74式戦車や廃棄予定のMLRSやFH-70に90式戦車を備蓄してはとおもう。

 ロシア軍は戦車戦略備蓄の最大四割を既に投入している、ISWアメリカ戦争研究所3月9日付の情報報告です。戦車戦略備蓄とは退役した戦車をそのままモータープールなどの放置しているもので、良好な状態、悪い状態、修復不能の状態、と分けて備蓄しており、良好な状態の戦車をメーカー施設に送り稼働可能の状態とし第一線に送っている。

 最大で四割、修理不可能な戦車の割合は不明ですが、二年ないし三年でソ連時代に備蓄した戦車の戦略備蓄は枯渇する見通しとのこと。なお、この分析はカーネギー国際平和財団ロシアユーラシアプログラムが衛星画像などのオープンソースから解析したもので、ISWはこの情報を独自に検証したものではない、と但し書きを付け加えています。

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