北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イタリアFH70改良とイギリスエイジャックス,ドイツスカイレンジャー30防空システム

2024-03-04 20:14:15 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は陸軍関連の情報です。ロシアウクライナ戦争の長期化を受けロシアとの全面対決を年とぷに置かざるを得なくなった欧州は重戦力の再編成や戦訓反映に注力しています。

 イタリア陸軍はFH-70榴弾砲の近代化改修についてレオナルドUK社などと契約を結びました。イタリア陸軍は2022年初めの段階でドイツ製PzH-2000自走榴弾砲とそのライセンス生産型70両とFH-70榴弾砲90門を装備していましたが、何れも一部がロシアウクライナ戦争勃発を受けウクライナへ軍事支援として供与されています。

 イタリア軍はFH-70を5個砲兵連隊に装備、各砲兵連隊は18両を定数としている。FH-70の近代化改修はレオナルドUK社とアリスSRL社との間で契約が交わされ、その規模は2180万ユーロとなっています。イタリア軍のFH-70近代化改修は2020年より開始されており、LINAPS射撃統制装置の追加搭載と自走用のエンジン換装を行っています。

 FH-70は世界で1007門が生産されました。FH-70榴弾砲の近代化改修について、その背景にはやはりロシアウクライナ戦争において供与されたFH-70榴弾砲がかなりの威力を発揮するとともに、大量の155mm砲弾が消費されており有効性を最大限発揮するには射撃統制装置の改良による命中精度の向上などを突き付けられたことが挙げられます。
■防衛フォーラム
 異常振動はどうなったのか。

 イギリスのエイジャックス装甲偵察車は評価試験をさらに前進させたとのこと。イギリス陸軍の軽装甲偵察車両群を一気に置き換える野心的なエイジャックス装甲偵察車について、もともとはリスクが少ないスペインオーストリア共同開発のASCOD装甲戦闘車を原型とした開発を行ったものの、異常振動など大幅な遅延に見舞われていました。

 エイジャックス装甲偵察車プログラムのクリスボウブリック氏によれば、2023年12月の段階で、2023年7月以降、その計画には大きな進捗があり、長時間乗車した場合は精神に異常をきたすとまで言われた車内の異常振動問題が一定程度解決されたことを示唆しました。2020年の段階では特殊なヘッドセットにより騒音を軽減する方針でしたが。

 エイジャックス装甲戦闘車は2024年にはスウェーデンでの射撃試験が行われる計画で、これはエイジャックスがイギリス国外の射撃場に派遣されるのは初の実例とのこと。大幅に遅れているエイジャックスですがイギリス軍はエイジャックスとその派生型となるアポロやアトラスなどをわで589両調達予定となっています。
■防衛フォーラム
 ピラーニャのライバルとされていた車両です。

 チェコのタトラ社は新型のパンドゥールⅡ―EVO装輪装甲車の開発計画を推進中です。パンドゥール装輪装甲車はもともと、オーストリアのステアーダイムラープフ社が1980年代に試作し1996年にオーストリア軍が正式採用した六輪式の箱型装輪装甲車でしたが、改良型のパンドゥールⅡ装輪装甲車は8輪型となり機関砲塔などを搭載しました。

 パンドゥールⅡ―EVO装輪装甲車をもともとのオーストリアではなくチェコが開発することとなった背景には、この原型であるパンドゥールⅡ装輪装甲車を採用したのがチェコ軍であり、こちらは30mm口径のMk44ブッシュマスター機関砲を備えたイスラエルラファエル社製RCWS-30機関砲を備え、非常に有力な装輪装甲車として評価が高かった。

 チェコ軍ではこれらを107両導入しましたが、徐々に老朽化が進んでいるとし、後継車両を開発することとなりました。パンドゥールⅡ―EVOとして原型の名称を採用こそしていますが開発されるイメージ図は車内容積を増大させるとともに車高や車体形状が大型化し、機関砲についても背負い式のRWSではなく30mm砲塔型を目指しているもよう。
■防衛フォーラム
 中型合成旅団用でしょうか。

 中国人民解放軍は625E型短距離防空システムを公開しました。これは2023年12月28日に中国SNS上において人民海保軍訓練映像として発表されたもので、この映像自体は人民解放軍第77集団軍の演習映像となっています。防空システムは八輪式装輪装甲車に機関砲塔とレーダー、そしてミサイル発射装置付砲塔を載せたものとなっていました。

 625E型短距離防空システムに搭載されている機関砲は25mmガトリングガンとされていますが、アメリカのGBU-25のような3銃身ではなく6銃身型とみられ、過去に公開された95式自走高射機関砲よりも銃身が増大、また別の画像ではミサイル発射装置装着部にFB-10地対空ミサイル発射筒を4連装、左右に合計8発搭載しているものが。

 FB-10は射程10㎞、機関砲射程は2.5㎞という。625E型短距離防空システムで特筆すべきは車体部分で、従来の准民解放軍装輪装甲車は08式装輪装甲戦闘車を基本としたものとなっていましたが、車体部分が大型化され第二車輪と第三車輪の側面に乗降扉が、車体もかさ上げされており11式装輪突撃砲の派生型車両か、若しくは新型の可能性がある。
■防衛フォーラム
 軽戦車型だけではなかった。

 フィリピン陸軍は建国記念日に新型ASCODを公開しました。2023年12月21日のフィリピン建国記念日において建国88周年を祝うとともに新型の25㎜機関砲塔を搭載したASCOD装甲指揮車を公開しています。フィリピン陸軍はオーストリアスペイン共同開発のASCOD装甲戦闘車にエルビット社製105mm砲塔を搭載した軽戦車を配備中で。

 ASCOD装甲指揮車はその大隊本部車両として調達されたもの。軽戦車型については既にフィリピン第1戦車大隊として編成完結していまして、エルビット社製105㎜砲塔は同国が各国へ提示していましたサブラ軽戦車砲塔を採用したもので戦闘重量は30t、アメリカのM-10ブッカー戦車駆逐車よりは軽量に収められているフィリピン初の軽戦車です。

 ASCOD装甲指揮車はイスラエル製UT25砲塔を搭載、こちらは二軸砲安定装置を搭載し行進間射撃が可能であり、砲塔型ではありますが砲システムそのものはRWS遠隔操作銃塔方式を採用しています。通信能力については、車内が公開されていないために不明な部分がありますが、RWS方式を用い車内に砲塔基部は無く容積が十分確保されています。
■防衛フォーラム
 日本は迎撃ばかりを考えてきましたが反撃能力が無ければという選択肢を隣国の勧告は示しています。

 韓国国防省は新型のKTSSM-1韓国戦術地対地ミサイル実験の成功を発表しました。ライトニングプロジェクトとして進められていますこの計画、発射試験はソウルから110㎞南西にある泰安郡国防開発庁試験場において実施されまして有効に機能したとの事です。このミサイルは韓国版HIMARSなどからの運用が可能で2019年より開発された。

 KTSSM-1韓国戦術地対地ミサイルの射程は120㎞でアメリカのATACMS陸軍戦術ミサイル韓国版を目指し、ATACMSよりも安価でありながらGPS誘導により誤差2mでの命中精度を有しているとのことです。韓国軍はATACMSを採用していますが、数の不足が問題であり、特にクラスター弾頭を備えた長距離ロケットは対砲兵戦力として重要です。

 KTSSM-1韓国戦術地対地ミサイルが開発された背景には韓国の離島への北朝鮮軍砲撃事案等、7000門以上という大量の火砲を有している北朝鮮軍の砲兵を制圧するにはこの種のクラスター弾頭しかないとされ、独自開発が進められてきました。改良型の長射程型も開発中とのことですが、当面はこのミサイルを2025年までに200発を配備する計画です。
■防衛フォーラム
 ヴィルカスとは狼のこと。

 リトアニア軍はボクサー装甲車調達計画を完了しました。納入予定の89両と試作車2両の完納です。リトアニア軍ではヴィルカス装甲戦闘車と呼称されるボクサー装輪装甲車は、バルト三国の一員としてロシア軍の軍事圧力を受けつつも小国であるゆえに近代的な戦車部隊を保有できないリトアニア軍にとり重要な装甲戦力となっています。

 ヴィルカス装輪装甲車は、2020年までに納入された車両の一部に問題が生じ、この回復についてメーカーとリトアニア国防省との間でかなりのやり取りがあったとの事ですが2022年にはこの問題は解消、30mm機関砲の遠隔操作砲塔RWSを搭載した装甲車はNATOリトアニア戦闘団との訓練においても活用されており、増強も検討中とのことです。
■防衛フォーラム
 まさか機関砲の時代が戻るとは。

 ドイツのラインメタル社はスカイレンジャー30防空システムの評価試験を実施しました。スカイレンジャー30はラインメタル30mm機関砲と索敵照準装置とデータリンクシステムを一体化した砲塔システムより構成され、ボクサー装輪装甲車などのモジュラー式装甲車やトラックなどにも搭載、低空目標や無人機、巡航ミサイルなどを迎撃するもの。

 スカイレンジャー30の評価試験は2023年12月にスイス国内のオクセンボーデン射撃場において実施、今回開発されているものが先行試作されているものにたいしてスカイレンジャー30A1となるもよう。同種の機関砲としてエリコン35mm機関砲があり、スカイレンジャー30の射程は30mmであるため3㎞となりますが毎分1200発の連射が可能です。

 30mm砲弾は砲塔に即応弾として252発を搭載、一発当たり160個のタングステン弾片を内蔵していて、一発当たりの重量は1.25gとわずかなものですがAHEAD弾薬方式で目標付近において信管を作動し致命的な弾片で目標を包み込みます。AHEAD弾薬は35mmと30mmのものがロシアウクライナ戦争において数発で無人機を無力化しています。
■防衛フォーラム
 ゴトランド島の防衛が強化される。具体的には戦車射撃場の無い離島に戦車を配備した場合でも訓練環境を維持するための手段はあるという点が重要だ。

 スウェーデン国防省はKNDS社より新型戦車シミュレータを受領します。今回導入されるのはStridsvagn122戦車用のもので、ドイツ軍のレオパルト2A5に相当する。陸軍戦闘学校と戦車部隊のTBTA砲塔乗員訓練施設に配備されるもの。供給されるものは、車体全体を訓練するシミュレータと砲塔部分だけの訓練を行うシミュレータとのこと。

 今回のシミュレータ導入は注目すべき点はゴトランド島のスウェーデン軍分屯地にも配備される点で、バルト海中央部の要衝であるとともに冷戦後、2022年ロシアウクライナ戦争勃発までは駐留部隊のいなかったゴトランド島にも戦車小隊や機械化歩兵小隊などが分駐しており、シミュレータ配備はこの分屯が恒久的であることを示しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア軍はアウディイフカ西方ステポジェとラストッチキネの田園地帯を前進オルブリカに迫る

2024-03-04 07:00:47 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 現在のウクライナ東部戦線、自衛隊の場合は国土に事前に十分な陣地構築が難しい以上は機械化部隊を重視しなければならないという状況を端的に示しているように思えます。

 ロシア軍はアウディイフカ近郊のラストッチキネ、ステポジェ、シヴェルネ村落を制圧している、イギリス国防省ウクライナ戦況報告2月29日付発表がロシア軍の動静を発表しました。この三つの村落はアウディイフカ中心部から6km圏内にあり、ロシア軍は2月17日のアウディイフカ中心部制圧から二週間弱にして6kmもの距離を前進した事となる。

 ウクライナ東部におけるロシア軍攻勢の主軸はこのアウディイフカ西方に集中している状況で、ロシア軍が大きな攻撃前進を成功させている背景には防御陣地として機能する堅牢な陣地や遮蔽物のおおい市街地などがこの地域にない為ではないかと、イギリス国防省は分析しています。ただ、これは次の都市までの潰走を意味するのかははんぜんとしません。

 ウクライナ軍には、かりに充分な弾薬があるならば砲兵火力によりロシア軍の得意とする露出した歩兵浸透を殲滅し得るものですし、航空打撃力があれば近接航空支援や航空阻止による侵攻の破砕や梯団の後方段列地域を叩ける、戦車等の機械化部隊が充分あれば陣地が無くとも側面防御や機動防御が展開可能ですが、欧米支援の滞りはこれを許しません。
■東部戦線の状況
 自衛隊に参考となる戦訓としては火砲の数も重要ですがなにより弾薬備蓄と弾薬量産体制ということなのでしょう。

 ロシア軍はステポジェとラストッチキネの田園地帯を前進している、ISWアメリカ戦争研究所2月29日発表戦況報告がロシア軍漸進の概況を発表しました。ステポジェはアウディイフカ北西地域にありロシア軍はステポジェの南方地域と南西地域で前進、ラストッチキネはアウディイフカ西方にあり、ロシア軍はラストッチキネ北西地域を侵攻している。

 ISWはブルームバーグ紙が最近発表した戦況予測を引用する形で示しており、砲弾の供与低調が続くようであれば2024年夏季までにロシア軍が更に大きく前進する懸念があるとしていて、戦術的前進を継続するか戦力を集中し大規模な突破口を開くかの選択肢があるとともに、後者を選んだ場合はウクライナ主要都市が危険にさらされる可能性を示唆した。

 西側支援の重要性について、ISWは、充分に準備されたウクライナ軍はロシア軍の規模に上回る大規模攻撃を阻止できているとの過去の事例を示したうえで、ロシア軍が今後どの程度前進するのかはウクライナへの死に側支援が左右する事ととなる旨の分析を示しました。ロシア軍は当該地域のベルディチとトーネンケとオルブリカの村落に向かっています。

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