いつも泣き言をいっていて、「頼りないやつ」と思われている方も多いと思いますが、その通りで「頼りない」者です。
いま校正を読んでいるのだが、読み始めた最初の一日は書くのに比べて「なんと楽なんだろう」と思ったが、二日目からは泣き言の連発である。翻訳というのは私たちの場合には英語の文を読んで日本文に直す。さらにその日本文を読んで通りのいい日本文に直す。はじめに英文があるので、その一つ一つの単語にひきづられて翻訳口調の日本語とは思えないような日本文ができている。それを英語の文からはずれて見直す。さらにもう一度英語と対照させて訳を見直す。
そういう作業の連続である。それに自分のあまり得意でない分野で予備知識がない場合もある。そういうところでも何とか訳さなくてはならない。いくつかの本を読んである分野の常識を仕入れた後にもう一度訳を見直すということもする。3人で訳をしているのでお互いに自分の長所を生かして訳をしたが、それは逆に校正の段階でも意見が違う場合もある。
それらのことを調整してなんとか最終の訳にこぎつける。校正の段階でもことが終わった訳ではない。計算したら、原本が間違っているという報告も出てくる。もちろん、これは訳の途中で初訳者の責任でやっているのだが、ここは大丈夫だろうと計算をチェックしなかったところにそういうのがあったりする。
まだ、原著があってそれを日本語に訳するのだから、助かるところもあるが、原著の著者は大変だろうなと感じてもいる。だからといって原著の変なところをそのままにしておくわけにもいかない。なんとか意味の通ったものとして提供しなければならない。もうしばらく私の泣き言が続く。大部な本を書く人は気苦労が絶えないだろうな思う今日この頃である。