今日の朝日新聞(大阪版)に負の屈折率という話が出ていた。物が見えるにはその物体にあたった光の反射を見ているからものが見える。このことは物理学を学んだものならば知っている。
ところが、光が反射しないで、屈折をして通り抜けるようにすれば、物がそこにあってもそこにあるとは認められない。これはもちろん光ではという意味なので、手で触ってみればそこにあることが確認できる。そういう物質を人工的につくったということらしい。
負の屈折率が何を意味するのかは私にはいまのところわからないが、そういう物質はもちろん自然界には存在しない。だが、人工的にはつくってやることができるという。その技術の応用もいくつか考えられる。新聞には4つほど載っていたが、損失の少ない光ファイバーへの適用とかメガネのレンズへの応用とかその他あるらしい。
昔、光がそのまま入射方向に反射して帰ってくるという装置の話を聞いたことがあった。これは何のことはない全反射を何回か起こして入射光を入射方向に反射させるようにした装置であった。
少し詳しく説明すれば、虹の出るメカニズムで説明されるような球か円筒を考えてその中で何回か全反射を繰り返してちょうど入射方向に光を反射させるという装置であった。
これは高エネルギー物理実験が専門家のK先生から聞いた話であるが、今度の話はメタマテリアルという物質をつくるという話である。その後東京農工大学の学長を務められた、このK先生ご高齢ではあるが、まだご存命だと思う。
レーザー光のことを応用物理で教えたときレーザーの話を勉強したら、負温度分布という概念が出てきた。
もちろん負の温度をもった物質など世界に存在しないが、分子とか原子のレベルで、あるエネルギー準位のところの分子数をそのエネルギー準位より低い状態の分子数よりも大きくなるようにしてやれば、反転分布状態、すなわち、見かけの負温度状態が実現する。普通の熱平衡状態ではMaxwell-Boltzmann分布だが、それが反転した状態をつくりだすのである。
このときMaxwell-Boltzmann分布に出てくる温度を負にすれば、その反転分布状態を説明できる。言葉だけで説明を聞けば、面倒な話のように思えるが、式を書き、図を描いて説明をすれば、誰にでもすぐにわかる話である。
光に関係したことでは色中心(カラーセンター)といった話題もあるが、これについては耳学問の域を出ない。
そういう物の認識の問題については、昔ある会合で聞いた、哲学者の大森荘蔵さんの「物の認識について」のたとえ話としてのコップの話についても一つの意見をもっているが、これらについてはいつか別の機会に述べたい。