E大学に勤めていたときに、3回フランス語の授業に断続的に半年づつ出たことがある。
はじめはドイツ人の教師R氏がマセさんのフランス語の授業に出ていると聞いて彼のテキストをコピーさせてもらい、R氏と二人並んで授業を聞いた。
マセーさんは日本語もよくできる人であって、彼の奥様は日本人であった。また愛媛新聞の四季録というコラムにその当時の半年間にわたって週一回書かれていたが、その日本語が端正な格調の高い日本語であった。
家庭ではフランス語と日本語のどちらを使われているのですかと日本語で聞いたら、一日おきにフランス語と日本語を使い分けているとのお話であった。
私はなんどかマセさんとカタコトのフランス語で話したことがあるが、いつだったか近くの喫茶店での昼食で一緒になったときにcoursをクルスと発音したら、クールと直された。
これはcourseなら「買い物」はクルスと発音するが、coursはクールでsを発音しないのである。私はドイツ語のKursのようにsを発音したのであった。ちなみにcoursもKursも授業という意味である。
このマセさんの授業で覚えたことが二つあった。一つは最近を意味する語でrecemment(レッサマン)という副詞であり、もう一つは幼児語でdodo(ドド)という動詞である。fait dodoというのは子守唄かなんかの文句にありそうな言葉でdodoは眠るを意味するdormirの幼児語だとそのときに聞いた。