月曜の夜に市民コンサートでショパン(Chopin)のピアノ曲を聞いた。ショパン生誕200年とかだそうである。ショパンといえば、いわずと知れたピアノの詩人との評がある。私はどちらかというと重厚のものよりは優美な曲で軽やかなものが好きなのだが、そういう曲はあまり聴かれなかった。
そういえば、武谷三男のエッセイに「ショパンがもっとも美しく聞こえたとき」とか何とかいうエッセイがある。これは彼が特高に捕まって留置所に入れられ、取調べを受けていたときに取調室から留置室に帰ろうとしたときにどこかのラジオからショパンの曲が流れてきて、それをしばし、たたずんで聴いたとかいうものである。
いまの時代でいえば、彼はまったく起訴されたり、取調べを受けたりするような過激な思想の持ち主ではなかったろうが、太平洋戦争の頃は彼も不届き千万な非国民ということであった。
戦後の彼の勇ましい発言からいうと、彼が最左翼であったかのごときに思われているが、少なくともその当時はそういうことはなかったといっていい。それを強硬な左翼主義者にしたとすれば、これはこの当時の特高の取調べの業績(?)にちがいない。
武谷のエッセイは名文だとは思わないが、それでもなんらかの香りがして来るように思う。それはどうしてなのだろうか。どうも文章のうまい下手を越えた思想か感性か何かがあると思われるのだ。