日本では亡くなった人を偲ぶのはお盆のある8月であろうが、ドイツでは11月が故人を偲ぶ月だという。普段は訪れない墓地(Friedhof)を訪れ、お墓に花を供えて、父や母とかを偲ぶという。
どうして11月がこういう月になったのかはわかならないが、12月はクリスマスがあって厳粛のうちにも楽しいイメージもあるので、その前の月が故人を偲ぶ月となったのであろうか。
それにドイツではもう11月は雲のかかったどんよりとした空で陰鬱な天気が続く。夕方も早い。森に行くともう冬支度であるが、森によっては月の初めころはまだ紅葉が残っているかもしれない。
モーゼル河 (die Mosel) の河畔からちょっと入ったところにある、ブルグエルツ(Burg Eltz)というお城を10月だったか11月だったか家族で訪ねたことがあった。
黄色や赤の落ち葉が積み重なって地面が見えなくなっている、大地を踏みしめて森の中をブルグエルツに向って歩いた。ブルグエルツには日曜日ということで城の中に入って見ることができなかったが、このときのハイキングはいつまでも頭に残っている。
森は、妻や私のような不信心な者でも世の中に神様がいることを信じてもいいのではないかと思われるのような神々しい景色であった。幼い子どもたちがそのときにどう感じたかはわからないが、そういう気持ちを話し合いながら、ブルグエルツからMainzに帰った。
もちろん、数日でそんな崇高な気持ちは直ぐに失せて、元の不信心者に帰るのにそんなに日数はいらなかったけれど。
だが、あの陰鬱な空と対比しての神々しいばかりの森の中では白雪姫のお話の小人がひょこひょこと出てきても違和感を感じないであろうとも思ったりした。