「指数関数と対数関数の構成 (II) 」という論文を読んでいる。
これは友人の数学者のNさんと物理学者 I さんの共著で、数学・物理通信への投稿論文である。それを少しづつ読んで文章に手を入れている。まるで、自分の論文かなにかのように。
それはまあ大したことではないのだが、対数と指数の関係についてこの論文ではあまり明確に述べられていない。
これは私の発見ではないが、
対数と指数とは同じものだが、単に見方がちがうだけだ
というのは札幌藻岩高校の数学の中村文則先生のご指摘である。その解説をインターネットで読んでやっと私なども認識したことであって、その指摘にしたがって私も「対数とは」ということをテーマにしたエッセイを何回か書いた。
ところが、「指数関数と対数関数の構成 (II) 」ではそれらが、密接に関連があることは書かれているものの指数と対数とが同じものであることを書かかれていない。だから、靴の上から足を掻くようなもどかしさがある。
徳島科学史雑誌にも数年前に「対数とはなにか」という題でエッセイに書き、そのコピーをNさんにもさし上げたので、私のエッセイを読んで下さっているにもかかわらず。
誤解を招かないために、数学をご存知の方のために少し説明をしておくと、
「指数と対数とが同じものであるからといって、対数関数と指数関数とが同じだといっている訳ではない」
対数関数と指数関数とは互いに逆関数となっているということはよく知られている。そして、グラフを描くとこの二つの関数はy=xに関して対称になっている。
もちろん、対数と指数とが同じものを指すといっても焦点のあて方に違いはある。どういう違いかというと
a=c^{b} は c と b とがわかっていて c^{b} (c のb 乗)がどういう数 a になることが関心があるときに b は指数といわれる。
また、a=c^{b} で a と c が与えられていて、b を求めたいとき、この b を対数といい、またこの b を log_{c}a と表す。すなわち、a は c の何乗であるかを求めるのが、対数である。
だから、b=log_{c}a ( log_{c}a は c を底とする a の対数) はa=c^{b} と数学的には同等である。
したがって、a=c^{log_{c}a}が成り立つ。この最後の等式はちょっと不思議な感じがするのだが、上のことを理解していれば、なんでもない。
もっともM大学の薬学部での物理の授業で、この対数を説明したときに、a=c^{b} を分からないという学生はいなかったのに、b=og_{c}a は分からないとか難しいという学生が授業後にアンケートをとると必ず数人はいた。
単なる記号の問題ではあるが、b=log_{c}aのlog 記号が難しい思われるからだと思う。
それで、いつもアルバート・アインシュタインがアルバート・アインシュタインと呼ばれるのは、アインシュタイン自身のせいではないのにと独り言のように呟くのが常だったが、学生たちには理解してもらえなかった。