秋葉忠利前広島市長が4選の市長選には出ないで勇退したことはテレビや新聞で知っていたが、その後をどうしたのか知らなかった。
秋葉さんはもともと数学者であるから今回知った転進の仕方は意外ではないのだが、広島大学の特任教授に就任されていた。これは私の購読している、雑誌「数学教室」(国土社)で知った。
数年前に広島で数学教育協議会の全国大会があり、そのときの総会で当時の委員長の野崎さんと対談をしたことを知っている。それが彼のもう一度のアカデミズムへの復帰の気持を促進させたのかもしれない。
秋葉さんが政界に進出する前は広島修道大学の教授であったし、その前はアメリカのタフツ大学の准教授であったから、もともと数学の研究者を目指した方であろう。
だが、どこかで政治を変えたいと思われたのか国会議員となり、その後に広島市長になられて、3期12年を務められたはずである。
それから、何を思われたかアカデミズムへの復帰をされたということである。そういえば、先日このブログで触れた、「この数学書がおもしろい」でポントリャーギンの「連続群論」を学生のころに読まれて分かりやすかったと書かれている。
私などは亡くなった池田峰夫先生の大学院の購読講義で同じ本の1~3章を読んだが、あまりよく分からなかったことを覚えている。そしてしばらくは群論拒否になった。池田先生はゼミの終わりに下巻の終わりの方に応用として役立つ章があるとボソッと言われたことを今でも思い出す。
池田先生はゼミでは「いつでもわからなかったらexample(例)を考えなさい」と注意を与えられたが、例を考えられるのはかなりの理解が進んでいないと考えられないので、結局はそういうアドバイスをもらったということしか私の中には残っていない。
ただ、解析接続の具体例を私が知りたいと強く思っているのはそういうアドバイスに忠実にしたがっているだけだが、あまりその具体例を広範に書いた本にはまだ出くわしていない。
「具体例を考えなさい、とか、上げなさい」とは友人の数学者Nさんが九州大学工学部の数学教室での数学書講読で先生方から強く言われたと何回か聞いた。
この「例を考えよ」というアドバイスは数学を学ぶ学生に与えられる「伝統的な教え方」の一つなのであろうか。もっともこれは数学を学ぶ者以外にも重要なアドバイスである。
いつだったかこのブログでも、ニュートンも
Examples are more important than precepts
と彼の代数のテクストの序文かどこかで言っていると書いた。