NHKのSongsで井上陽水の歌を聞いていたら、古くから有名な誰かの歌だとかいうので、歌っていた歌の文句に
・・・(コーヒーは?)モカマタリ
という歌の文句が出てきた。
いつだったかは忘れたが、京都で学会か研究会があったとき、実は昨年夏に亡くなった、私の友人の物理学者K君と京都四条通から少し入ったところの喫茶店に入った。そこでK君が注文したコーヒーがマタリだった。それまでそういうコーヒーを知らなかったので記憶に残った。K君はマタリはモカコーヒーなんだとそのときに私たちに説明をしてくれた。
K君はこの有名な歌の文句からマタリを知ったのか、はたまたそうではないのかそのときにそういう歌の文句があるのだなどと彼は話さなかったから、今となってはもう分からない。K君はそういうネタを明かすような野暮な人ではなかった。
私などは野暮天もいいところでコーヒーの名前などまったく知らない。よく知られたコーヒーにブルーマウンテンだとかキリマンジェロなどというのがあったかな、などということすらおぼろげである。それほど世の中のことを知らない。
アメリカンなどという薄めのコーヒーもある。私などは頭の毛が薄いので、陰であいつはアメリカンだなどと陰口をたたく輩もいるらしい。
同様なことがカクテルにも言える。ピンクレディだとか青い珊瑚礁だとかいうカクテルがあったかな、なかったかなとこれもおぼろげである。最近NHKのドイツ語の講座でCosmopolitanというカクテルの名が出てきた。そういうカクテルがこれは本当にあるらしい。
それで思い出したのだが、数学者の矢野健太郎氏のエッセイに、あるとき数学者が一斉にどこかのバーに出かけてカクテルを注文したというのがある。そしてそれぞれの数学者たちが自分の薀蓄を披露して、カクテルを注文したのだが、中に一人ワイアーストラウスというカクテルを注文した数学者がいた。
バーのウエイターは注文を聞いてひきさがったが、しばらくしてすみません、ワイアーストラウスはあいにくいま切らしておりますと言いに来た。
矢野先生、本当にこういう名のカクテルがあるのかどうか不思議に思って、件の数学者に後でこっそりと聞いたところ、どうもこの数学者のユーモアの、いたずらであって、そういうカクテルはないだろうということであった。
ワイアーストラウスはドイツ人の数学者であることは数学者なら誰でも知っている。それくらい有名な数学者である。
(2012.6.14付記) カクテルということで思い出したのだが、原爆の父として有名なオッペンハイマーはもちろん物理学者だが、彼はときどきカクテルパーティを自宅で開くことで有名だったという。ときどきこのブログにコメントを下さるN博士は若いときにプリンストンの高級研究所で研究をされたことがあるはずだが、この有名なオッペンハイマーのカクテルパーティにひょっとして行かれたことがあるのだろうか。