インターネットで武谷三男を検索していたら、西村肇さんという方の雑誌「現代化学」に出ていた南部陽一郎さんの業績のすごさを述べた論文に出会った。
なかなか読み応えのある論文である。何が読み応えがあるかということを一言ではいえないが、南部の論文とかエッセイだけから南部の心情というか心理に迫っているところがすごい。
これが南部の実際に感じていたところと一致しているのか、またはかなりいいところにまで迫ってはいるが、もう一歩なのか。
このことは南部がまだ生きているので本当はわかるはずだが、そんなことを南部には答えてはもらえないだろうから、最終的にはわからないかもしれない。
だが、こういう試論を書いた人がいるというのは驚きである。なかなか丹念に南部の研究を追っているので、私などはたじたじになってしまう。だが、西村さんにしたがって南部さんの研究をいつか追体験してみたいと思っている。
西村さんは星野芳郎とも親しかったようであり、星野の追悼文も書いておられる。これで知ったこともあり、興味津々である。
この追悼文で近藤完一さんと星野芳郎との角逐にも触れている。近藤完一が亡くなって武谷三男が生前がっくり来たというのはどこかで読んだから、いろいろな側面を武谷はもっていたのだろう。
いつか、西村さんにメールをして教えを請うてみようか。
(2012.9.10付記) 西村さんの論文から南部さんの業績のすごさを理解したことはわかったが、もうちょっと詳しく突っ込んでほしいと思うところもあった。
それは南部の業績の具体的にどのような点が独創的であり、こういう風に考えたのではないかというようなことに想像や推測をめぐらせてもらえたらもっとよかっただろう。
いわば、朝永振一郎の『量子力学 I, II 』 (みすず書房)が行っているような記述をほしいと思った。
これは単に私の感想(不満?)であるから、そんなものには西村さんが応える必要はないのだが、そんな余計かもしれない注文というか物足りなさをあとでちょっぴり感じたのもまた事実である。