昨日、岩波のPR誌『図書』7月号の記事の黒田和夫さんのことを書いたときに書き忘れたことがある。
それは温泉の熱がRaの崩壊熱から説明ができるのではないかと考えていた、あるアメリカの地球化学者の教授が黒田さんの天然原子炉の研究に感銘を受けて黒田さんをアーカンソー州立大学に招いたのだという。
小嶋稔さんのそのエッセイでは残念ながら、Raの崩壊熱では温泉の熱を値が小さすぎて説明できないとのことであった。
しかし、最近見たバークレイ白熱教室では地下の熱エネルギーは放射性物質の崩壊熱がそのオリジンであるとムラ―教授が言われていたので、上の小嶋さんの話と合わせて気になった。
大体、地球の核の方の温度が高くなっていることは知っていても、それが何によるのかなどと普通の人は考えたりしない。それはそうなっているのだからしかたがない。
しかし、一般の人にはそうであっても科学者にはそれではことが済まないということであろう。
研究はもっと進展しているではあろうが、『科学の事典』第3版(岩波書店、1985)によれば地球の全表面から外に出ていく熱エネルギーは6.5*10^{20}ジュールだという。
地震や火山活動のエネルギーはこれの大体1/100くらいだという。それをどこから供給しているのかというと、岩石に含まれるわずかな比率の放射性物質の出す熱量であるという。
海底に流れる熱流と大陸の地殻の下を流れる熱流の違いがあまりないことはこの書の出版されたころはまだ疑問が残っているという。その後、この疑問が解消されたのかどうかはわからない。
何にでも関心をもつのが科学者ではあろううが、こんなことにはついぞ関心をもったことなどなかった。
(2013.7.17付記) もちろん固体とか液体や気体を圧縮すれば、その温度は上がってくる。だから、物理学的に地球内部の温度を論じるときにはそのことも考慮しなければならない。
念のために言うと、上に引用した『科学の事典』にはもちろんこのことについても記述がされている。