物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

天然原子炉と原爆開発資料

2013-07-02 14:25:21 | 科学・技術

「地球上に天然の原子炉が存在したのではないか」という理論を提唱していた、黒田和夫さんという人のことを岩波書店のPR誌「図書」7月号で読んだ。

黒田さんの書いた講談社ブルーバックスでそういう題の本があり、面白そうと思ったので購入はしていたが、読んだことはなかった。

その天然原子炉の話がとても要領よく説明されていた。原子炉の中には水が中性子の減速材としてまた、熱を伝える熱伝達材として入っているのだが、自然の原子炉の可能性は水がないのでありえないと原子炉をつくったFermiたちは思っていたらしい。

だが、水が過去のウランの鉱床に結構十分あり、かつU235の含有率は20億年前にはいまのU235の3.5倍の含有率であったろうという。これは現在の原子力発電で使われる濃縮ウランのU235の濃度にほぼ等しいという。

そういういくつかの条件下では天然の原子炉が地球上に存在しえたはずだというのが黒田氏の推論であったが、原子炉の研究をしていた人からはそういう理論は無視をされたという。

ところが1972年になって、フランスの原子力庁がアフリカのガボン共和国のオクロ鉱山から産出されたウラン鉱が異常な同位体組成をもっており、原子炉で使用済みのウラン鉱の燃えカスに似ていると発表した。

さらに、これは黒田が予言した天然原子炉の理論でほぼ完全に説明ができると結論付けたという。

これだけでも話が面白いのだが、理化学研究所で行っていた、戦争中の原爆開発の関係文書を黒田が預かっていたという。

このエッセイの著者小嶋稔さんはその依頼をしたのが理研の誰であったかはわからないと書いている。死後その資料は理研に黒田夫人から返却されたという。

それで思い出したのだが、黒田さんがアメリカから日本に里帰りしたときに「武谷三男に会って、天然の原子炉について議論するために日本に来たと言っていた」とどこかで読んだ。

それはもちろん、武谷が書いていたことではないが、武谷が亡くなった後でどなたかがそういう回想をされていた。

そういえば、武谷は戦争中に理研にいたし、原子力研究の一端を理論的に担っていたことも事実である(2014.3.17  付記参照)。

もっとも武谷は原爆が広島に落とされたころ、特高に捕まって取り調べを受けており、それは調書が出来上がる直前であったから、黒田さんに文書の秘匿を頼んだ本人とは考えにくい。それでもひょっとすれば、事情をうすうす知っていた可能性はあったのではないか。

(2014.3.17  付記)武谷の戦時中の原子力研究の一端の成果として1955年ごろに発行された、岩波書店の『現代物理学』講座の1冊の豊田利幸博士との共著の『原子炉』がある。

この書は原子炉の原理について述べた隠れた名著ではないかと思っているのだが、そういうことを知っている人もあまりいなくなってしまった。


XOHDA

2013-07-02 13:44:27 | 外国語

XOHDAとはサッカーの本田選手のユニフォームの背中に出ていた名前のホンダを表すロシア文字である。XO(ホ)、H(ン)、DA(ダ)である。

本当はロシア語ではDがDではなく、ちょっと違っているのだが、この字母はDに対応しているから、このまま表しておいた。

Hは普通のアルファベットならNに対応した字母である。昨夜、プロフェッショナルの条件の本田選手の再放送がNHKであった。

終わりの方で、どこかの学校に出かけて講演をした後で、学生が本田選手に質問したのに答えていたが、それによると本田選手は自分が好きだと言っていた。このことはひょっとしたら、とても大切なことかもしれない。

自分が好きであり、努力をしてすばらしいサッカー選手になりたいと思っていることはとてもいいことだ。

が、これは一般に自尊心が強すぎて、人をないがしろにしたり、軽蔑したり、または軽んじたりすることをいいと認めることではない。

これはもちろん本田選手のことをそうだと言っているわけではなく、一般にそうだろうと思う。自分を大切にすることはもちろん大切なことではあるが、それは他人を傷つけない範囲での話である。

私の知っている人でそういう人がいるという話ではもちろんなく、自分に言い聞かせていることにすぎない。

もっとも認知症等がひどくなると、理性が働いていたときには自分を抑えて来ていた、激しい気性が直接に表にでてくることがあるかもしれない。

その場合にはもちろん他人に不快な感情を与えるのは必定であろうが、病気であるから、そういうことが私自身に起きるとしたら、生きている間のしばらくを、まわりの人にお許しをお願いするしかない。


オイラー角による空間回転

2013-07-02 11:33:15 | 物理学

四元数のシリーズの一環として「四元数と空間回転」を数回にわたってサーキュラー『数学・物理通信』に書いている。

そろそろ、オイラー角による空間回転の表示について書く時期が来たように感じている。いままでなかなか普通に物理を学んだ人がよく知っている、オイラー角による空間回転の記述まで来なかった。

先日からベクトルの空間回転のRodriguesの公式について書いているのだが、それについて書くのなら、やはりオイラー角による空間回転について書かなければならないだろうと思いはじめた。

はじめ「四元数と空間回転5」の付録に書こうと思っていたのだが、どうも別項目にした方がいいのではないかと考え始めている。

私の友人などでも空間回転といえば、オイラー角による表現だと思っているらしい。それで四元数での空間回転の説明を読んでくれた友人にも理解をなかなかしてもらえなかった。

それでようやく「オイラー角による空間回転」の表現について触れる機会が来たことを喜んでいる。