Francais sans larme(涙なしのフランス語)というフランス語の入門書があった。
その書を読んだこととか購入したことはないのだが、それくらい涙なしにはフランス語は学べないということだったのだろう。
しかし、フランス語はどちらかというと英語に親しんだ人には入口は学びやすい言語である。だが、学習が進んでいくとちょっと難つかしいところがある。
それは動詞の変化である。動詞が直説法には現在、未来、半過去、複合過去、大過去、単純過去、全過去があり、条件法にも現在、過去があり、接続法にも現在、半過去、過去、大過去がある。
長年フランスの初級を学んでいても単純過去はあまりお目にかからなくて、物語とか小説でしかお目にかからないので、よくわからない。また、条件法現在と未来とが動詞の変化でよく似ているので紛らわしい。
それらが大変ではあるが、語順としては直接および間接人称代名詞が動詞の前に来るのと形容詞は原則として名詞の後ろに来るのが英語と違っているくらいである。あまり難しいことはない。
ドイツ語では定動詞(主語にしたがって変化する動詞)の位置が平叙文では文の2番目の位置に来るとか副文では定動詞が文の最後に来るとか現在完了や助動詞構文で動詞の第二成分が文章の終わりにおかれて枠構造をつくるというような面倒さがある。
こういう面倒さがフランス語にはない。
フライブルクのゲーテ・インスティチュートでドイツ語の講習を受けていたころ、友人のエジプト人の化学者が理解していなかったのはドイツ語のこういうところであった。
コースが進んでいった終りの方になってもこれらの動詞の語順を理解していなかったので、1,2度は先生も注意をしたが、ついには先生からも見放されたような気がした。
それに彼は英語は上手に話したから、あまりドイツ語を話せなくても痛痒は感じなかったであろう。
同様なことは途中から入って来た、ハンガリー人の若い学生にも見られた。話すことは何でも言うことができるように思えたが、やはりときどき先生に直された。だが、彼にはどこがどういけないのかわかってはいなかったろう。
ドイツ人にとってはドイツ語は空気みたいなものだから、ドイツ語の配語法の独特さにはあまり気がつかない。それで日本人はとくにそのことを気を付けて学ばねばならない。私はそう考えている。