Mさんの徳島科学史研究会での講演のテーマが表題にあげた『地球学から地球「楽」へ』であった。
その講演の中でクイズみたいな問題があった。
地球が凹凸のない完全な球体であるとする。いま、1メートルの高さから水平線を眺めたときどのくらい遠くまで見渡せることができるでしょうか。
答えの候補がその後に出ていたが、私は1500メートルくらいと山カンで答えたが、本当は3500メートルくらいだという。
Mさんは講演の中でこれはピタゴラスの定理を使えば、解けるのですと言われた。そのときはどうやってその答えを出せるのかわからなかったが、帰りの電車の中で時間があったので、考えてみた。
1メートルの高さから水平線まで見渡せる距離をxとし、地球の半径をrとすれば、視線の水平線のところで円との接線になっているから、この水平線とその接点へ向かう地球の半径といま1メートルのところから、見渡そうとしているところの3点はちょうど直角三角形となっている。
したがって、
(r+1)^{2}=r^{2}+x^{2}
という式が成り立つ。いま地球の半径 r=6350km とすると、 x=3.57km が近似値として得られることがわかった。ここで、平方根の計算はあまり正確ではない。だが、まあ、近似値だから許してもらえるだろう。
上の式を x について解けば、
x=\sqrt {2r+1}
であるが、r に比べて1mはとても小さいから、 \sqrt {2r}を計算した。
電車の中なので、電卓も何も持っていないので、筆算でした計算だからいい加減な計算である。だが、それほど間違ってはいないと思う。
こういう例題をピタゴラスの定理のところの演習問題として出すことができれば高校の数学の演習としてもいいのではないかと考えながらの電車の中の2時間半であった。
ちなみにこの問題は古在由秀『地球をはかる』(岩波書店、1973)に出ている問題だという。
(2013.8.31付記) いま西條敏美さんの『測り方の科学史 I 地球から宇宙へ』(恒星社厚生閣、2011)を調べたら、8ページに遠望距離として表になって出ている。なお、この遠望距離がわかれば逆に地球の半径 r を求めることができる。こうやって昔の人は地球の半径を求めようとしたのである。なんという人間の知性よ。感嘆させられる。