3月21日の春分の日に愛媛大学のグリ-ンホールであった、木村真三氏の講演を聞いた。題は『原発被曝後3年の現状と課題』というのであったが、印象に残った言句をここに書いておく。
木村氏は「データをとることが科学ではない」と強調されていた。そして「反証可能でないものは科学ではない」というカ―ル・ポパーの主張を述べていた。
もっともこの命題は私もだが、妻も違和感を感じたようである。普通に数学などの定理が一つでもそれにしたがわない例を挙げることができれば、その命題を否定することができるので、私にはしっくりとは来なかった。
要するにポパーがどういう意味で反証可能性を使ったかを知らないと何も言えないからである。
講演後の質問でもこの点に触れた質問はなかった。それは木村さんが別に科学論の講演をしたわけではないからである。
それでもそのことの違和感があって、妻と少し話をした。
福島の住民の人たちは一年に20mSvの被ばく量なら、帰還してもいいという国の方針に対して、木村さんは帰還すべきではないと言っているらしい。
そして20mSv以下の放射線量では、人体に影響がないということが証明されたわけではないという主張らしかった。確かにそうであろう。
放射線量の閾値があるという説とそんな閾値はないとする説とがあると聞いている。そして、人が受けていい放射線量はその人のリスクとベネフィットで決まるというのが世界全体で受け入れられている考えである(注)。
ポパーの引用「反証できないものは科学ではない」ということと上の放射線量の問題がどうもかかわっているらしいというのが妻の推測であったが、ほんとはどうなのだろうか。
(注)この放射線量の許容量はその人の受けるリスクとベネフィットで決まるという考えはいまではICRPの見解ということになっているが、もともとは日本の物理学者・武谷三男の言い出したことである。