ゆっくりとしか進めない。いま準備しているフーリエ解析のエッセイのことである。そしてそれもだいじなことがまだ書けていない。
もっとも、これが人さまの前に見せられるようなものができ上がるという保証もない。多分に自分の満足するものができるかどうかはどうも見通しがもてない。
10年以上前に「電気電子工学科ミニマム」に書いたときには、はなはだ暢気なものであった。フーリエ級数の収束性のことなどまったく触れていなかったし、その意義とかどういう応用があるのかもまったく関心をもっていなかった。
もちろん、それらしい言及は同僚の先生方の助言でちょっとは書いてあるけれども。第一、フーリエ解析が偏微分方程式の解法に役立つなど知っていなかった。まるで知っていなかったとは言えないだろうが、少なくとも意識したことはなかった。
だから、認識の段階がすこしは進展したのだろうが、それとて普通の物理研究者が知っているようなことを知っていないというに過ぎない。
ベクトル解析は大切という意識はもっていたが、場の量子論でフルにフーリエ展開が出てきたりするのにその重要性についての認識があまりなかったとは我ながら情けないことである。
古典的な場のフーリエ展開では振幅だったところが、場の量子論では生成演算子や消滅演算子にあたることはもちろん知っていたけれどもそこら辺りも、もう記憶の彼方になってしまっている。