応用解析とは何か。洲之内源一郎『フーリエ解析とその応用』(サイエンス社)のまえがきには「微分方程式、複素解析(複素関数論)、フーリエ解析」が三本の柱だろうとある。
また、C. L. リウ『組合せ数学入門』(共立全書)の訳者まえがきには工学部の応用数学では「複素関数論、微分方程式、特殊関数論」などの解析的な話にちょっぴり「ベクトルや行列」がはいる程度だろうと述べてある。
この本は「組合せ数学」を推し進める本だから、工学部における応用数学の旧態依然たるところを述べているのはしかたがない。
この本では第2章は「母関数」となっており、母関数について述べられている。もっとも私はこの本をほとんど読んだことはない。今回は母関数の記述がある文献として以下に挙げておきたい。
母関数の方法は有力な方法の一つであるが、特殊関数を学ぶときに母関数についてちょっと触れるくらいであろうか。ルジャンドル関数、エルミート関数とか、ラゲール関数を学んだときに、それらの母関数をちらっと学んだ。特にルジャンドル関数の母関数は高木貞治の『解析概論』(岩波書店)の122頁に出ている。
母関数とは英語ではgenerating functionといわれる。母関数の重要性について述べている伏見康治さんのエッセイが、『数理のつみ草』(みすず書房)にある。また、その思想を反映したのかどうかはわからないが、伏見康治、赤井逸『直交関数系』(共立出版)がある。
エルミート関数の母関数については矢野 忠『物理数学散歩』(国土社)に述べられている。また多くの量子力学のテクストには量子力学に出てくる特殊関数の母関数のことも述べられている。例えば原島鮮『初等量子力学』(裳華房)やポーリングとウイルソンの『量子力学概論』等がある。
母関数という語はその他では解析力学でみかけるが、特に正準変換と関係した母関数がある。たとえば、Goldstein, Poole Safko『古典力学』下(吉岡書店)や山本義隆、中村孔一『解析力学』(朝倉書店)にも解析力学での母関数について触れられている。