をしている人はもちろん職業の一つとして出版社をやられているのであろうが、やはり出版を通じて社会に貢献したいという志があると感じる。
小著『四元数の発見』を出版してくれた海鳴社の T 社長などもそういう志をもった方である。はじまりは海鳴社から堀源一郎著『ハミルトンと四元数』が発行されたことにさかのぼる。この本の第2章を読んでよく分からなかったことから、私の書いたエッセイを送ったところ『ハミルトンと四元数』の編集に協力された K さんがそのエッセイを読んでくださって確かにこちらの方がわかりやすいと言われたことから、T 社長が乗り気になられてなにか書きませんかという話になった。
T さんは「四元数のことなら、海鳴社と言われるくらいになりたい」という志を私にメールで述べられて、なかなか筆が進まない私を励ましてくださった。T さんから依頼を受けてから 7 年後にようやくその依頼に応えることができた。
いまでは四元数の関係の本は私の知る限りでは日本では7冊出版されている。その中で2冊を出されているのは海鳴社と工学社だけである。他の出版社は培風館、日本評論社、森北出版とそれぞれ1冊づつである。
それぞれの出版社が特色のある書を出されているので、それぞれが意味があるけれども、四元数についていま学ぼうとする若者がいれば、そのどれを選択して読むのかの選択に迷うほどである。
話がいつものように大きくはずれた。出版人という人たちにも単なる職業から離れたこういう志をもった人がいる。このことは常に心に止めておきたい。