について生まれ始めてというわけではないが、意識的に読み始めた。手始めに学部4年生のころに輪講で読んだSchiffの量子力学の本の該当箇所を読み始めた。
もっとわかりやすい本があればいいのだが、あまりいい説明を書いた書は意外とない。もちろん、長々と書いた本はある。学生のころに推選された書はRoseの``Elementary Theory of Angular Momentum"である。この本は日本語訳もその後出版されている。
このRoseの本と一緒に推奨された本が山内恭彦『回転群とその表現』(岩波書店)であった。そのとき力学の演習を担当していた Y さんが山内さんの本よりもRoseの本の方がより物理的だと言われた。
そういうことがあったので、大学に勤務するようになったときに、山内さんの上記の書を読み始めたが、あまり読み進まないうちに放棄してしまった。
角運動量に関しては梅沢、小谷編の『大学演習 量子力学』(裳華房)の角運動量の章を読むことで代替してしまったと思う。しかし、これを読んだのは多分大学院でも博士課程に入ってからであったと思う。非相対論的量子力学がある程度分かったと思えるようになったのは角運動量の章をきちんと読んでからであると思う。そのことはすでに Y さんが学部2年生の私たちに言われていたことでもあった。
世の中にはなかなか賢い人達がいて、インターネット上で量子力学の解説のサイトを開いている。そしてその中には角運動量の解説があったりする。私などはそういうことの必要性を先生方とか先輩から聞いてようやくそのことに気がついたのに、そういう教育を受けたのか、あるいは受けたことがないのにもかかわらず角運動量の重要性を知るようになる独学の人がいるのは驚きである。
(2018.3.14付記) Schiffの本の角運動量の定差方程式をどうやって解くところが長いことわからないままだった。昨日、またそれが気になったので、広田良吾著『差分方程式』(培風館)をとり出してきてその真似して解こうとしたら、別に真似するまでもなく解けてしまった。こういうところが学生のころには分からなかった。私だけがわからないだけで普通の人はわかっていたのだろうと思うと自分のばかさ加減が情けなくなる。もうちょっと真剣に考えてみるべきだった。私にはそういうところがたくさんある。
角運動量の理論の難しいところは角運動量の合成の法則が難しいことにあると思う。しかし、角運動量の合成はベクトルの合成に似ているのだが、ちょっと和が飛び飛びにしか取れないところに特徴がある。すなわち、連続なベクトルの合成ではない。それさえわかれば難しいところはない。きちんとした計算ではClebsch-Gordon係数を計算することを学べばよい。
大学院生のころ、私たちの先生の O さんが駆け出しの研究者だったころ、このスピンの合成を知らなかったとかで頭を丸刈りの坊主にしたことがあるのだとか冗談交じりに話されたことがあった。詳しいことは知らないが、多分重陽子のスピンの話ではなかったろうか。もちろん、重陽子の構成要素である、「陽子と中性子とがスピンをもっていることは知っていたのですがね」と言われたと思う。