小林亮、高橋大輔『ベクトル解析入門』(東京大学出版会)の紹介を昨日はできなかった。いまも、まだあまりよくは読んではいないのだが、はっきり言えることは、この本は他のベクトル解析の本とは大いに異なっている。
すなわち、いい方向に異なっている。第2章「場と座標」というところがあるのも普通のベクトル解析の本とちがうところだろう。コンピュータ・グラフィックスで描かれた多く図があり、場のイメージを醸成するのに役立つだろう。またその理解のために等位面とかの3次元的な表示もある。
場を図示することによって、ベクトル解析を少しでも近づきやすいテーマとしたいという著者の意向がよく出ている。
線積分、面積分、体積分といったベクトルに関係した積分の取り扱いのほうがベクトルの微分の取り扱いよりも順番として早く出てきているというのもこの本の特徴である。
積分は加算の一般化であり、微分は除算の一般化であるから、加算の一般化である、積分のほうが除算の一般化である、微分よりもわかりやすいという考えから、積分のほうが先にこの書ではでてくる。
もっとも、ベクトル解析の最終目標である、ガウスの定理とか、ストークスの定理とかの扱いは最終章である、第8章の「積分公式」までとっておかれている。そして、その証明も他の多くの書とは少し違っているように思える。もっともそれは「微分積分学の基本定理」の一般化としてのストークスの定理、ガウスの定理の証明を目指していると思われる。
ただこの書には微分形式等の話はまったくでてこず、そういう意味では限界があるかもしれない。しかし、流体力学や電磁気学の理解にはこれで十分であろう。