岩波のPR誌「図書」の5月号にフランス語の俳句の紹介があった。小津夜景さんの「ジャン=マリー=グリオの俳句を読む」の中にである。少し紹介してみよう。
Au cinema
Les acteurs s'endorment
Quand ca commnce
役者たち睡るシネマの幕開けに
L'autobus arrive
Un zazou a chapeau monte
Un heurt il y a
Plus tard devant Saint-Lazare
Il est question d'un bouton
あしふみの
長きバス首
さわげども
のちのボタンは
さん=らざりけり
(朝比奈弘治訳)
これにはzazou(ジヤズ狂の青年)とかheurt(対立)とか知らない語がある。
訳を読んでも意味がわからない。zで始まるフランス語は全く知らなかったが、初めて知った。それにしてもzで始まるフランス語はとても少ない。
(バスが到着した。帽子をかぶったジャズ狂の青年が乗った。
後で、ちょっとした騒動がサン=ラザールの前であった。
その原因は一つのボタンのことであった。)
とでもいうことなのだろうか。知る人ぞ知る。
On parle sans savoir
on 'ecoute sans savoir
je mange chewing-gum
知らず言い知らずて聞くやガムを噛む
Une seule abeille
achete les fleurs
pour la ruche
一頭の蜂が花買う長屋かな
rucheは知らなかった。これは「巣箱」の意味らしい。rucheは人間で言えば、長屋にあたるのだろうか。その訳者の発想がおもしろい。
まだ、数句あるが、紹介は明日にしよう。
「図書」を読む人はインテリだとは思うが、どれほどの人がフランス語を解するのだろうか。でも、それを紹介しようとする私のようなものもいる。