『物理学と数学』(江沢洋選集 IV)(日本評論社)を拾い読みした。これは昨年末に発行になったのだが、つい今日まで書店にとりには行っていなかった。
都内の数学科の学生の連合みたいなところに属する学生が江沢さんにインタビューしている中で、興味をひかれたのは物理とか数学のことではない。
江沢さんが高校のときに、英語の先生がwhichという語の前にコンマがあるかないかで訳が異なるといったので、そんなバカなことがあるかと言ったという話である。
これはたぶん、コンマがないときには関係代名詞の「限定用法」とか言われ、コンマがあれば、「継続用法」と言われる。普通には高校の先生でもコンマがなければ、which以下のところを前にかかるように訳せというのが普通であろう。
また、コンマがあれば、whichの前の先行詞の付加的な説明になるので、そのまま説明を訳に反映すればよいと教えられる。
しかし、こういう説明は日本語訳をつくるときにはいいが、英語の話者はそういう風には理解しない。この頃では英語教育者の中でもテレビやラジオで活躍されている、大西裕人先生になどはそういう立場で教えておられる。
私なども英語を中学時代に塾で学んだが、その先生も文章の書かれてある順序に意味をとっていけという教えをされた。関係代名詞といえども、ひっくり返って意味をとるのではないと口を酸っぱくして言われた。
そういう意味では私はとてもいい先生に英語の初歩の手ほどきを受けたといまでも感謝している。
(2020.1.25付記) (2020.10.26付記補充)
肝心の数学とか物理のことの感想を書かなかったが、エッセイを書かれた中村徹さんによれば、量子力学の摂動計算の研究を最近ではされているようであり、その持続性にとても感激した。
私も以前に量子力学の摂動計算ではないが、古い江沢さんたちの研究の発展みたいな研究をしたことがある。その後、そのご縁で1,2の共同研究をさせてもらった。
江沢洋先生の定年時に発表された研究論文リストの最後は私たちとの共同研究論文であった。その後にも江沢さんは論文を書かれているであろうから、生涯で最後の論文にはなっていないと思うが。
それから、場の量子論はその無限自由度の存在がどうも本質的であり、そこにいろいろな困難があるとの見解を持たれていることを知った。
イタリア生まれのアメリカの天才物理学者フェルミのような、本質を見抜いたモデルの抽出もここではできないのではないかという。さすがは多年の研究の結果として持たれた困難の原因の本質をきちんと見据えておられる、江沢さんだと思った。