インターネットでブルーバックス『数の世界』(講談社)のCMをたくさん見たので、この本を読んでみたいと思っていた。
昨日、久しぶりに近くのブックオフに出かけたら、目当ての『数学ガールの秘密のノート』はまったくなかったが、『数の世界』を見かけたので買って帰った。妻が不在だったので、四元数のところを読んだ。
もっとも数学者らしく表現とかは数学用語での説明であったが、私の『四元数の発見』(海鳴社)からヒントを得たと思われる箇所もあった。
書き方は悪くはないが、ひとつだけ私の賛成できないところは、ベクトル記号を文字の上に矢印をつけた表記法である。やはり太字でベクトルは書くべきでしょう。
ベクトル記号を文字の上に矢印をつけた表記法は見にくいというのが私の意見である。有名な量子力学のテクストである、Pauliの『波動力学』もこのベクトル表示であるのはよくないと私は思っている。
内容はいいとしても表示の仕方で拒否反応を起こすかもしれない。そうはいうものの私とて完全に文字の上の矢印記号を排除できたわけではなかった。
だが、できるだけさけることができたと思っている。内容は悪くないのに表示が悪いのは再版の機会があれば、修正をすべきだろう。
わかりやすい書を書くためには表記法も考える必要があるという意見をもっている。
欠点をあげつらうのが私の本意ではないのでよかったところも挙げておく。
私が3次のCauchy-Lagrange恒等式と呼んでいるものの証明が四元数の虚部だけを使えばできるとあった。これは私の気のつかなかったところであった。
2次のCauchy-Lagrange恒等式は複素数を用いるとできるし、4次のCauchy-Lagrange恒等式は四元数を用いると証明できる。3次のCauchy-Lagrange恒等式の証明は四元数の実部分を除いた式で証明できるというのである。
証明自身を詳しくは読んでいないが。
このCauchy-Lagrange恒等式の証明が私が四元数に関心を持った動機であった。