La vie en rose(バラ色の人生)とは有名なフランスのシャンソンのタイトルであろうが、物理学者の武谷三男が最晩年に入っていた老人施設の名前でもある。
ラビアンローズと続けて言うのが普通であろう。なにか一語のようであるが、一語ではない(注1)。
2000年4月に武谷さんが亡くなったときに、哲学者の鶴見俊輔さんが武谷さんのobituaryを朝日新聞に書いていたが、亡くなる前年の1999年にこのラビアンローズに武谷さんを訪ねたと書いてあった。
そのときに、そこでも武谷は元気でだいぶん鶴見さんと話をしたらしい。ある意味では論争と言ってもよかった。
また別の人の証言では入院した病院のベッドの傍には彼が若いときに熟読したと言われる、ワイルの『量子力学と群論』(山内恭彦訳)の訳書があったという。
その本の現物を一度 M さんの事務所で見たことがあると思うが、もうほとんど二つに分解していた。そこには細かな書き込みがあったと記憶する(注2)。
いつかこの書き込みをよく読み込んでみたいと思っているが、そういう機会が私に訪れるとはとても思えないというのが本当のところであろうか。
(注1)ラビアンローズは意味ごとに、きちんと分けて発音するとラヴィ アン ローズであろうが、そうは発音しない。そこがフランス語の音の「きれいさ」であり、また「難しさ」でもある。
(注2)Mさんは武谷さんの死後、彼の残した資料とか書籍の遺族からの寄贈を受けた責任者である。武谷三男史料研究会の会長をされている。武谷家のMさんに対する信頼があついということだろう。