[写真は民主党の前原誠司副代表]
筒井信隆さん、山田正彦さん、篠原孝さんの3人のネクスト農相経験者による「前原副代表“退場勧告”メール」がブログなどで大きな話題になっており、私も驚いています。
この件に関する正確な理解に資するため、前のエントリの下に参考としてつけていたメール全文を資料編としてエントリ化します。
【関連エントリ】
6月13日付エントリ【前原批判メール】農水部門会議幹部「戸別補償への批判は看過できない」
6月12日付エントリ民主党批判を繰り返す前原副代表に「退場」メール 筒井、山田、篠原3議員
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ありがとうございました。
【資料編】 「前原さんへの“退場勧告”メール」の全文は以下の通り。
民主党国会議員各位<o:p></o:p>
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前原誠司民主党副代表の妄言を糾弾し、その「退場」を勧告する<o:p></o:p>
2008.6.12<o:p></o:p>
ネクスト農水担当 筒井信隆 <o:p></o:p>
前ネクスト農水担当 篠原 孝 <o:p></o:p>
元ネクスト農水担当 山田正彦<o:p></o:p>
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1,はじめに<o:p></o:p>
一昨日発売の「中央公論7月号」誌上において、前原誠司副代表は、昨年夏の参議院選挙における民主党マニフェストについて、「仮にこのまま民主党が政権を取っても、まともな政権運営はできない」などの批判を自民党と一緒になって展開している。また、報道によれば、去る7日の京都市内での会合(ホテルで開催した前原パーティー)で、農業者戸別所得補償制度に対して自民党が行ったバラマキ批判に「私もそういう気持ちを強く持っている」との発言をしている。前代表で現副代表でありながら「民主党ではまともな政権運営はできない」とか「民主党の農業政策はバラマキだ」等々と言える精神は理解しがたい。<o:p></o:p>
こうした言動は、民主党農林水産部門が中心となって議論に議論を重ねて構築してきた農業者戸別所得補償制度の経緯のみならず農林漁業・農山漁村の努力と苦労についての無知・無理解に基づくものであり、次期総選挙のことを考えても看過し得ないので、あえて、その問題点を指摘する。<o:p></o:p>
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2,所得補償(直接支払)制度は前原代表(当時)自身が了承決定したものだ!<o:p></o:p>
まず、1兆円所得補償制度は鳩山代表及び菅代表当時から民主党の政策であった。特に岡田代表当時の2004年5月26日に発表した「民主党農林漁業再生プラン」で1兆円の直接支払いの導入により農政の転換を図ることを明記している。<o:p></o:p>
その後、前原代表当時の、2006年3月、この農林漁業再生プランを法案化した「食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案」(農林漁業再生法案)を提出した。同法案の中で、原則として全ての販売農家に対する総額1兆円規模の直接支払いの導入が盛り込まれているが、これは、農業者戸別所得補償制度と同内容の政策である。<o:p></o:p>
民主党法案の提出に当たっては、次の内閣での了承等の党内手続きをきちんと踏んでいる。同法案提出当時、党代表の役職にあったのは、誰あろう前原副代表その人である。内容を知らなかったでは済まされない。仮に、昨年夏の民主党マニフェストを批判するのであれば、まず、自らが党代表として下したこの判断について自己批判をし、政治家としての不明を恥じるべきである。そもそも偽メール事件において危機管理能力、問題対応能力のなさをさらけ出して民主党に多大の損失を蒙らせて辞任したことを思えば、謹慎蟄居こそ必要なのであって、マスコミにこのような言動を公表する資格もないことを自覚しなければならない。<o:p></o:p>
3,バラマキ批判の不当性-合理的根拠も政策効果もある所得補償制度<o:p></o:p>
そもそもバラマキとは、今までの自民党政権が行ってきた農業政策や公共事業に象徴されるような合理的根拠もなく、政策効果も期待できない税金の使い方のことを言う。<o:p></o:p>
民主党が提案した農業者戸別所得補償制度は、農家が無償で果たしている空気・水・土の維持浄化等多面的機能(経済的価値は日本学術会議試算によれば年8兆円)に対する対価(の一部)として支払うもので、合理的根拠を有している。
しかも付加価値向上努力やコスト削減努力等々に加算する仕組みとなっており政策効果が期待できるものである。
つまり農業者戸別所得補償金を交付し、農業・農村の底上げを図ることによって、食料の国内生産の確保と農業者の経営の安定を図り、食料自給率の向上と地域社会の維持・活性化等を期すものである 。
合理的根拠を有し、十分な政策効果が期待されるにも関わらず、大規模農業に限定されないため交付金の対象者が多いというだけの理由で、バラマキと批判するのは、言いがかりである。
直接支払制度の先進地である欧米においても同様の制度を導入しており、農業者の経営規模に関わりなく、交付金を支給する仕組みとなっていることを知るべきである。
4,農地制度改革に対する無知・無理解
①「転用規制は強化」が民主党の一貫した政策-前原副代表は、農地制度についても、同誌上において「いっそうの規制緩和が必要」とし、「ジリ貧と言われる農業だって、転用を規制した農地法の縛りがなくなれば、大いに展望が広がるのではないでしょうか」などと支離滅裂なたわごとを言っている。<o:p></o:p>
農地制度の改革をめぐって、民主党では、国際的な食糧需給がひっ迫する中、食料自給率が39%まで落ち込んでしまった我が国の食料安全保障の見地から、農地を農地として利用する仕組みの在り方はいかにあるべきか、必要な農地を守るための転用規制の厳格化と参入規制の緩和をいかに進めていくかという観点で農地制度の改革を進めようとしている。<o:p></o:p>
農地制度改革の急先鋒である財界にあっても、参入規制の緩和と、転用規制の厳格化をセットで求めている。前原副代表の発言は、転用規制の撤廃さえも求めるもので、こうした流れにも逆行するものである。<o:p></o:p>
農地転用規制を撤廃すれば、農業に展望が開けるどころか、農地総量の下支えがなくなることを意味し、それでなくても進んでいる農地面積の減少に拍車がかかり、国民に対して食料を安定供給する基盤が脆弱となり、食料自給率は一層低下することは火を見るよりも明らかである。こうした考え方は、亡国の政策である。我が国の国民一人当たり農地は4アール弱で、フランスの10分の1以下、ドイツの5分の1以下である現状を考慮すればなおさらそういえる。<o:p></o:p>
②参入規制は緩和されている-前原副代表は本年1月25日の予算委員会質疑においても「上場企業はまだ農業に参入できない」と事実に反する発言をしている。農業特区制度が全国展開されて上場企業を含めた株式会社がたくさん農業参入している事実についての無知・無理解をさらけ出したのである。なお上場企業を含めた建設土木関連会社や食品関連会社が多く農業参入しているが必ずしも成功しておらず、撤退企業も相次いでいる。前原副代表は上場企業等株式会社が参入して「農業の産業化」等々を実現すれば農業は立ち直るかの如き発言をしているが決してそうではないことも知るべきである。<o:p></o:p>
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5,食と農への無知・無理解<o:p></o:p>
また、報道によれば、前原副代表は、事務所に出勤すると毎日菓子パンと惣菜パンをそれぞれ一個ずつ食べるのが日課であるが、あるとき、新人女性秘書が間違って菓子パン2個を用意したところ、激怒して「菓子パンなんか2個も喰えるか!」と大声で怒鳴り、菓子パンをごみ箱に投げ捨てたそうである。(週刊文春 2007年10月18日号) <o:p></o:p>
これが事実であるならば、極めて由々しきことである。生命の維持に欠くことのできない食料を粗末にするような人間に食料・農業について論ずる資格はなく、議員としての資質ばかりか、その人間性に重大な問題があると言わざるを得ない。<o:p></o:p>
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6,前原副代表への勧告<o:p></o:p>
前原副代表の言動は、民主党の政策構築の経緯を踏まえず、自らの政策決定への関与を故意に失念し、自民党の主張に擦り寄るばかりか、食と農に対する理解の無さを天下にさらけ出したものである。これは、今まで、民主党農政の構築に知恵を絞り、汗を流してきた多くの同僚議員や民主党農政に対してご支持をいただいた国民各位に対する重大な背信行為である。<o:p></o:p>
以上を踏まえ、<o:p></o:p>
前原副代表におかれては、ご自身の立場、政治家として信義の在り方に思いを致し、自らの出処進退を明らかにされんことを勧告するものである。