渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

“50%の優しさギャップ”があるからこそ、しっかりやりたい“偽装献金”の危機管理

2009年07月05日 19時47分20秒 | 第171通常会(2009年1月~)自民党追い込まれ

[写真]民主党の中井洽(ひろし)元法務大臣(三重1区)

 私は大学(政治学科)で安全保障論を専攻していました。民主党だと前原誠司さんも、大学・指導教授が違いますが、ほとんど同じ分野です。ただ、「安全保障論」といっても一般的でないので、「国際政治学です」と言っています。「安全保障論」というと、安保闘争の研究をしていると勘違いされることが大半で、そんな“夏の日の火遊び”の現場検証をしても、将来何の役にも立たないじゃないかと反発したものです。

 飯尾潤さんらの第三者委員会の「政党としての危機管理能力」という言葉にマイブームです。4月・5月からとても興味を持っています。

 読売新聞が2日(木)・3日(金)、麻生内閣のミニ改造を受けて、緊急世論調査(電話方式)を実施。おそらく自動音声方式で、RDD、1732世帯から1021人の有効回答を得ました。回答率58・9%と少し物足りないですが、緊急調査ですからやむを得ません。

 民主党・無所属クラブの鳩山由紀夫議員の総務大臣届出政治資金管理団体「友愛政経懇話会」の収支報告書偽装問題についての質問。

 「(前略)~鳩山代表は、国民に説明責任を果たしていると思いますか、そうは思いませんか。」との質問に、79・7%「そうは思わない」の選択肢を電話で、“プッシュ”しました。

 ところが、その次の、「民主党の鳩山代表は、この問題の責任を取って、代表を辞任すべきだと思いますか~(後略)」との質問に、「辞任すべきだ」を“プッシュ”した人は29・5%にとどまりました。

 もちろん、自民党支持者にも一律に同じ質問をしているわけですが、79・7%が「説明責任を果たしているとは思わない」のに、「辞任すべきだ」が29・5%にとどまったこの“50%のギャップ”は民主党および政権交代への国民の支持のあらわれです。

 だからといって、この問題はうやむやに幕引きしようとすることは、政権準備党としてふさわしくないし、上田知事が「ホップ・ステップ・なんとやら」と評した民主党の甘さを彷彿とさせます。つまり、政党としての危機管理能力に欠けていると断じざるを得ない。

 というのは、この「50%のやさしさ」ですが、新事実が出てきたり、延長国会のせめぎ合いでの対応を間違った瞬間に、「民主党への失望」に変わる可能性があるからです。国民の50%が失望したら、政権交代は吹っ飛びます。実るほど頭を垂れる稲穂かな、国民が史上最高に民主党を温かく見守ってくれているのだからこそ、最も厳しく身を律しないといけません。

 岡田克也幹事長(三重3区)は6月30日昼、中井洽(ひろし)元法務大臣(三重1区)に「7月7日(火)の常任幹事会で、この問題の対応を諮りたいので、よろしくお願いします」と電話しました。

 中井元法務大臣は民主党常任幹事会の議長です。中井元法務大臣は「中身がわからないといけないので、鳩山君の記者会見の要旨を常任幹事や議員にメールで送付したらどうだい」と岡田幹事長に提案しました。

 この7日の常任幹事会は重要です。結論が重要と言うことではなく、談論風発、様々なことを話し合うべきです。時間も大事です。常幹は長くても1時間ほどで終わりますが、2時間でも3時間でもやったらいいのです。

 役員会を終えた後、役員は大会議室に移動して、待機していた常幹メンバーと合流して、常幹を開きます。羽田孜(長野3区)渡部恒三(福島4区)、藤井裕久最高顧問らも加わり、会議室の人数はおよそ2倍になります。

 5月12日の常幹では残念なことがありました。これに先立つ役員会で当時の代表が4人の役員を指さし、怒鳴り上げたことは報道でご存じかと思います。

 役員会の不穏な空気は、常幹から加わったメンバーも気付いていたでしょう。が、あるベテランが「全国で300選挙区あるのに、現職議員(112総支部長)だけだと、日本全国の半分の声しか反映できないことになる。新人・元職の総支部長も代表選に加えたらどうだい」と提案しました。おそらく役員会メンバーは「ああ、この人は、相変わらず空気が読めない人だなあぁ」と感じたでしょう。案の定、当時の代表さんは、「○○先生とは思えない発言だ!」と怒鳴り上げ、空気が悪くなったそうです。が、この発言が奇貨となり、四国ブロック選出常任幹事である衆院当選1回生の小川淳也さん(香川1区)らも発言しました。

 
[写真]民主党の小川淳也・常任幹事(衆院議員)

 そもそも、役員会の雰囲気をいったん断ち切って、冷静に大所帯で議論するための常幹です。このベテランは元来KYな発言が多くて知られていますが、初当選以来の党歴は首相経験者とまったく軌を一にしており、その政治改革への志、二大政党制へのゆるぎなき信念は高く評価されています。つまり日常はKYですが、政治家としての大所高所としての判断はしっかりしているのです。これは矛盾というよりも、分野を問わず大物にはこういう人が多い傾向があります。

 常幹は自民党でいえば総務会にあたります。自民党の連中なんて、この民主党ベテランの100倍、KYな連中です。つまり、空気を読むのではなく、自己主張がすべてなんです。「俺を大事にしろ!」という一点張りを様々な修飾語を使ってしゃべるわけです。総務会は全会一致になるまで延々と総務の連中にしゃべらせますから、ガス抜きになり、あれだけ政策がメチャクチャなインチキ政党が54年間の長きにわたり政権を担い続ける原動力となりました。

 偽装献金についても、例えば、公開討論会で、麻生首相(自民党総裁)が鳩山代表に「新事実が出てきたら、あんたどうすんのよ、切腹する?」と迫り、鳩山代表が一瞬たじろげば、一部の国民は「鳩山さんは何かやましいことでもあるんかいな?」と思い、投票行動に影響します。しょせん、そういう世間の問題です。

 だから、せめて、常幹で徹底的に議論する。小沢代表代行は静岡県知事選の選挙結果の報告をしたら、さっさと退室すべし。

 私は、公設第一秘書だった「K」さんについては、民主党側から刑事告発すべきだと思います。それが危機管理です。自民党側より先にすべきなんです。

 「武田と内通した」という織田信長の通報を受けて、徳川家康は長男を切腹させました。「50%の優しさ」の順風を帆に受け続けるためには、身内を厳しく律しなければなりません。
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