【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

鳩山総理の英語力 「ドクター鳩山」の「25%」の新鮮さ

2009年09月26日 21時18分36秒 | 第172特別会(2009年9月)鳩山政権発足

  きょうは土曜日ということで、息抜きをかねて書いてみたいと思います。

 鳩山総理の英語力ということで、「カナダde日本語」のミニーさんが書いていましたので、僕もこれをテーマに書きます。ミニーさんとは5月の代表選で意見対立があって没交渉となってしまいましたが、政権交代が成功したので、また仲良くして欲しいと願います。

 気候変動サミットや国連総会の鳩山さんのスピーチを聞きながら感じたのは、鳩山さんの英語はクセがあるけれども、まったりとして、上品としています。CNNや米議会(C-SPAN)、英議会の中継で聞く政治家の英語とは明らかに違う。ニューヨークの国連本部でも同様だと推測します。やはり学者が話す英語だし、米西海岸スタンフォード(カリフォルニア州)の英語なんだろうな、と推測しました。

 そのスタンフォードで難しい数式を扱っていたドクター鳩山が「1990年比25%削減」という数式を流暢に発表したことの新鮮さと信頼感が、気候変動サミットでの各国参加者の拍手につながったんだと思います。英語は10億人が話しているのですから、上手い下手よりも、「伝わる」ことが大事です。

 鳩山さんは麻生さんと同じ東京出身ですが、日本人の特徴である「L」と「R」の発音がハッキリしていないところがあるようです。麻生さんの場合「R」が思いっきり巻き舌のべらんめえ調で思わず吹き出してしまうことがあったけど、鳩山さんは巻き舌ではないが、「L」と「R」の発音が少し聞き取りにくい気がします。この辺は世代的な問題もあり、幼少期の英語トレーニングであまり意識していなかったのかも知れません。僕なんかは「L」と「R」の違いは厳しく指導されたけど、実際は今でもハッキリ発音できないので、最近はたまにしか話しませんが、英語で話している途中に「L」と「R」を反対に発音したことに気付いて、言い直すこともあります。ただ、10億人が話す英語なので、そういうことを気にかけるより、スピーチの流れにそって話す方が「伝わる」。学者英語で、温室効果ガスの削減目標を「25%」とハッキリとした数字でスピーチしたから、国籍や人種を超えて「伝わった」んだと思います。

 もし、手元に地球儀がある人はスタンフォード大学近くの「サンフランシスコ港」を見つけて、「サンフランシスコからイチバン近い外国はどこか?」ということで、上下左右を見渡してみたら面白いことに気付くと思います。

 サンフランシスコの左は太平洋でその先に日本がある。右は北米大陸でその先に大西洋があってようやく欧州にぶつかる。上のカナダ、下のメキシコもかなり距離はある。

 アメリカの西の玄関であるサンフランシスコ港の周辺住民にとって、実は「外国」がとても遠い存在であることが分かると思う。だからアメリカ人、とくに西海岸では、外交に興味がない。歴史的に覇権国の国民にはその傾向がありますが、「イラク問題」の世論調査も、子供や親戚が派兵されるかもしれないという国内問題として理解している節がある。イラク戦争への支持率が男女でかなり違ってくるのは、父母の差だと私はとらえています。

 私が1990年の高校生の時分にカリフォルニア州サンディエゴでホームステイしたときに感じたのは、メキシコは「軽蔑」、ソビエトは「悪」と認識されているということでした。ホストファミリーの一人はベトナム帰還兵・傷痍軍人でしたが、彼は「国(自分たち)の誇り」であって、ベトナムがどこにあるかはたぶんみんな知らない。ただ、当時ラオス人民民主共和国が国費留学生をカリフォルニアに送っていて、本国のマネーだけで愛国心及び向上心のない日本人学生と違い、ラオス学生は尊敬されていました。「ラオスの近く」という意味で、ベトナムに対する印象も悪くない、悪いのは、東海岸ワシントンにいる政治家連中だという意識です。とはいえ、ベトナム戦争最大の“戦犯”と私は考えている「亡きジョン・F・ケネディ」は没後も尊敬され、最も影響力のある元大統領なのですから、本当に世論とは得体の知れないものです。その後の1995年、クリントン民主党政権はベトナム終戦(サイゴン陥落)からわずか20年で「米越国交正常化」に成功しました。

 ところで、サンフランシスコから左の太平洋に目をやると、ハワイ州を超えて、最初に出てくる「外国」が「日本」だということを再確認できるでしょう。だから、日米同盟は世界で最も大事な二国間関係のひとつであることは自明の理。冷戦を崩壊させた、共和党のロナルド・レーガン大統領は、知事を務めたカリフォルニアの太平洋をのぞむ丘に葬られているんですが、レーガンの目に最初に見える外国は日本だということになります。

 そのことに僕は心強さを感じるし、それも含めて僕は元来、共和党びいきです。昨年の米大統領選でも共和党のマケイン上院議員の演説は日本人にとっても聴き取りやすい英語を話していました。一方の、オバマさんの演説は、エリートの英語であり、おそらくワシントンで話されている英語はオバマさんの英語が近いと思う。この傾向は、前々から民主党候補に顕著だし、とくに初めての非白人候補は「ワシントン英語」が達者でないと勝てなかったでしょう。

鳩山首相国連演説(全文) 温室効果ガス25%削減 中期目標を表明

鳩山首相の英語 - カナダde日本語

鳩山首相の英語
鳩山首相の英語、マスコミで言われているほど上手くないという人もいるけど、私としては、日本人の英語としては上等だと思う。

上の動画で一部を聞いただけだけれども、鳩山首相の英語は、麻生太郎とは比べ物にならないほど、とてもきれいな発音だった。

まず、英語と日本語は声の発生の仕方が違う。日本語は口先だけの発生でもOKだが、英語はお腹の中から深く息を吐き出しながらの発生となる。鳩山首相はこの英語の発生がよくできている。

次に、単語一つ一つが、正しく発音されているのが聞きやすい理由だと思う。もちろん、細かくチェックすれば、日本人にありがちな母音の発音が長すぎたり、子音が正しく発音されていないなどの問題はあるが、とても小さな問題だ。

最も大きな問題は、一つのセンテンスの中での抑揚の流れが、ネイティブスピーカーの英語とは大きく異なること。これは、英語に囲まれて生活し、子供のときからずっと英語を話している人ではないとできないことであるというのは当然のことであり、日本語が第一言語の鳩山首相がこのネイティブの抑揚がつけれらないのはしょうがない。

全体的に、鳩山首相の英語は、英語を第一言語としない人にもとてもわかりやすく話しており、好感が持てたと思う。米国と対等にやっていくためにも、これからの鳩山外交に期待したい。