【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

足立信也さん、あざやかな腕前を見せる 「歯科口腔保健推進法」がきょう成立へ

2011年08月02日 07時27分08秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]法案の起草について説明する民主党の足立信也さん、2011年7月26日の参院厚労委、足立さん本人のホームページから。

 政権交代後のチーム長妻で厚生労働大臣政務官を務めた、参院議員(大分)で、医師の足立信也さんが、あざやかに議員立法を決めようとしています。

 7月26日(火)の参院厚生労働委員会をネット生中継で見ていたら、津田弥太郎委員長(民主党)の冒頭発言にアレッ?。

 [議事録から引用はじめ]

○委員長(津田弥太郎君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 社会保障及び労働問題等に関する調査のうち、歯科口腔保健の推進に関する法律案に関する件を議題といたします。
 本件につきましては、足立信也君から委員長の手元に歯科口腔保健の推進に関する法律案の草案が提出されております。内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、まず提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。足立信也君。

(中略)
 
○委員長(津田弥太郎君) 本草案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言願います。──別に御発言もないようですから、本草案を歯科口腔保健の推進に関する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(津田弥太郎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、本会議における趣旨説明の内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(津田弥太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

 [引用おわり]

 ということで、開会と同時に、法案が提出され、質疑もなく、あっという間に全会一致で可決し、本会議に送られました。翌朝の7月27日(水)の本会議では、津田委員長が「第177国会参法13号」として、趣旨説明し、すぐに採決され、全会一致で衆院に送られました。

 7月29日(金)の衆・厚労委では、津田さんが「参議院の厚生労働委員長でございます~~」と登場し、趣旨を説明しました。

 
[画像]法案提出者として趣旨説明する参議院厚労委員長の津田弥太郎さん、2011年7月29日(火)、衆院厚労委員会、衆議院インターネット審議中継から。

 これに対して、衆・厚労委の牧義夫委員長が「この法案について、質疑の通告はありません」として、採決し、起立総員の全会一致で、衆院の委員会もあっという間に通りました。きょう2011年8月2日(火)午後1時からの衆院本会議で、可決・成立する運びだと思います。

 というわけで、これは何だ?足立信也さんだから大丈夫だろうけれど、政治家のことだからまさか全会一致の“悪だくみ”でありゃしないか?と思い、参議院の議案情報のホームページを見たら、すぐに法案が載りました。参院のホームページは衆院のホームページに比べて、議案が早く載ります。

 おこがましくも、私が有権者代表を自任し、法案をチェックしたところ、国民に対して「定期的に歯科にかかる検診を受け」ることで「歯科口腔保健に努める」という努力規定が第6条に盛り込まれていました。そして、国と自治体に対しては「国民が定期的に歯科にかかる検診を受けること」を「促進するため、定期的に歯科検診を受けることなどの勧奨」などをしなさいと第8条に定めています。厚生労働大臣に対しては「それらの総合的な実施のための方針、目標、計画その他の基本的事項を定める」ことを第12条で求めています。また国や自治体に対して「口腔の健康に関する実態の調査、口腔の状態が全身の健康に及ぼす影響の研究、歯科疾患の予防と医療に関する研究など」を政策として実現するように、第11条で求めています。

 というわけで、どうやら、私たち国民が歯医者さんに定期検診に行くよう国や自治体が促すという法案のようです。日本歯科医師会(日本歯科医師連盟)は、自民党政権時代から、民主党の神奈川県議(現・市長)や、参議院議員(現在は前職)を公式ホームページで組織内議員として紹介するなど、野党時代の民主党には比較的近い存在でした。昨年の第22回参院選では、組織内候補として西村正美(西村まさみ)さんを立て、逆風の中、全国比例(改選定数48)で10万票を獲得し、民主党としてはラストの16位の当選者として、10万票を獲得し、当選させています。

 この法案の背景として、歯科医師の経済状況が厳しくなっていることが考えられます。歯科医院がコンビニの1・5倍あるのは有名ですが、自民党文教族によるバブル期の私立大学歯学部増設のあおりで、親から継承した開業歯科医院でも、来訪者が減り、医療機器のリース代の返済に困窮するケースも相次いでいるようです。このため、歯科医師資格保持者を、麻酔科医に振り向ける案が以前から言われていますが、なかなか難しいようです。また、水道にフッ素を配合すると、虫歯になりにくいといううわさを聞いたこともありますが、この辺も何らかの政治的な力(power)が働いていて、実現が難しいようです。

 日本歯科医師連盟も前回の参院選で集票力が10万票しかないことが判明してしまい、必死だと思います。小国が外交に長けているように、必死の努力の結果、歯科検診の定期化と口腔の状態が全身の健康に与える影響について、調査する事業を税金でやってもらうということになるようです。こういう票と資金と法律という関係については、「透明性」が大事で、その利害関係について、とやかく言うべきものではないと考えます。アメリカなんかはもっとハッキリしていますが、政治資金収支報告者は日本よりももっと透明化しており、「何が悪い!?」という感じです。

 実際のところ、歯や歯ぐきの状態から、全身の疾患が分かったり、歯肉炎を治療しておくことで、自分の歯が歳をとっても長持ちすることは明らかです。ぜひ、定期歯科検診を勧奨し、できれば、国民の自己負担料金が安くすむ事業を自治体の方でやってほしいと思います。有名モデルが「若さの秘訣は特にない」としながら、「20歳代のころから、もっと歯を大事に磨いていればよかったかなあと後悔しています」
と言っていたのを聞いたことがあります。歯磨き(ブラッシング)のやり方なんかも、歯科医院で、模型を見せてくれながら教えてくれるところも多いですから、ぜひ定期検診やったらいいですね。

 というわけで、当ブログとしては、この法案はOKということになります。本来は、国民によく見えるよう、ある程度の質疑があった方がいいのですが、いかんせん、衆参の厚労委は、夏休みの宿題が数年分山積みになっていて、8月31日の会期末までに処理しなければいけない案件が山ほどあります。

 そこで、国会法56条の1の「参議院では発議者1人以上と賛成者10人以上の合計11人以上」とされる議員立法ではなく、国会法50条の2の「委員会において起草しあるいは成案を決定し、委員会提出の法律案とすることに決すると、委員会から提出する。この場合の提出者は委員長とする」の「委員長立法」のしくみを活用して、法案化し、きょう成立見通しということになりました。

 足立さんは、野党時代の「対案路線」や政務官時代の「閣法の提出と答弁」の経験を踏まえて、厚労委で議員立法を重視する理由について、下の動画でインタビューに答えていますので、興味のある方はご覧下さい。 

↓民主党ホームーページおよびYouTube「民主党チャンネル」で7月3日ごろ公開された足立信也さんのインタビュー。「民主党政権は本来は閣法(内閣提出法案)が基本」としながら「議員立法を活用するようになった」経緯について、「野党とすりあわせがしやすい」などと分かりやすく説明しています。

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