宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

ついに米国債が格下げ 代表選などやっている場合じゃない!

2011年08月08日 23時32分42秒 | その他

[写真]アメリカの夢と希望を載せたスペースシャトル、ラストミッション(アトランティス搭乗)の乗組員たち=NASAホームページから。

 ついにこの日が来ました。

 米格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は2011年8月5日(現地時刻)、アメリカ長期国債の格付けを最上位の「AAA(トリプルA)」から1段階引き下げ「AA+(ダブルAプラス)としました。

 これは米覇権を決定的にした1941年、戦間期(第1次→第2次政界大戦)に、米国債を「AAA」に格付けしてから、70年目で初の格下げです。1971年のニクソン・ショックを乗り切ってからも40年ということになります。が、2008年9月のリーマン・ショックで決定打を浴びた格好です。これに伴い、米財務省は、S&Pの10年先の米国債残高の見積もりに2兆ドルもの誤りがあるのを見つけ抵抗しましたが、S&Pは押し切りました。なお、ムーディーズは格付けを維持しました。アメリカ同様に政府債務残高が問題となり、景気が不安定となっているヨーロッパでは、イタリア地検特捜部がS&Pとムーディーズを家宅捜索するなどの国策捜査的な動きも見られました。

 もともとアメリカの財務長官がサインしただけの紙っぺらにすぎないドルが、国際基軸通貨、国際決済通貨であり続けることにはムリがありました。むしろ、ドルは長年、よくがんばってくれた、ありがとう!という感謝の念でいっぱいです。

 この問題で、私がイチバン物差しにさせてもらっている、同志社大学教授の浜矩子さんは7日付朝日新聞2面で、「格下げで基軸通貨ドルは最後の力を失うことになるかもしれない。そもそも海外から膨大な借金をしている米国のドルの価値が高いはずがない。リーマン・ショック後も価値を維持できたのは過去の栄光で買われていただけだ。ただ代わりの通貨はない。ドルやユーロ、円、人民元などがどんぐりの背比べをする体制に変わっていくだろう」と述べています。

 日本の財務省主管の外国為替特別会計には、平成21年(2009年)3月31日時点で、有価証券が90兆443億円、現金・預金が31兆8851億円あると、発表されています。このうち、どれだけのドル建ての米財務省証券があるのか、償還期限がいつかというのは、財務省理財局が情報公開しておらず、よく分かりません。ですが、1兆ドルを超えている可能性が高いと思います。

 日本とアメリカは永遠の同盟国であり、運命共同体の浮沈空母ですから「墜ちたドル」を売り飛ばすという友情に背くことはできません。

 ただ、できれば、アメリカ政府が円建てでもドル建てでもいいから、日本国債を買ってくれたり、日本が持つ米国債を担保に国際機構に融資するなどして、「持ち合い」の体制を強化すればいいと考えます。リーマン・ショック前では、ドル・円マーケットの9割が投機・投資筋で、本来の貿易の決済用の取引は1割程度だったとされています。ここを両国政府間が頻繁にマネーを融通し合うようになれば、投機筋の割合を薄めることができるような気がします。

 世界経済は不確実性を高めています。だからこそ、わが国は、地震があっても新幹線で死者が出ない「安全・安心大国」として、昇竜のごとく、右肩上がりを続ける、アジア各国の資産の保管場所、いわば「ストレージ大国」として、金融の自由化による内へのグローバリゼーション、すなわち第3の開国をすべきです。そしておそらくグローバリゼーションはやや落ち着き、日本を捨てて海外へ出て行った人材も多少は日本に帰ってくると思います。この人たちは英語ができますから、ストレージ大国として、対外資産の管理業務などの労働をしてもらって、単純労働は、英語のできない人や、FTAなどにもとづく他国からの人材輸入でまかなうことが、日本で生まれた人のハッピネスにつながると信じています。

 さて。

 さる2011年7月21日(木)の午前5時57分(米東部時刻)、あの素晴らしい、スペースシャトル「アトランティス号」がケネディ宇宙センターに帰ってきました。シャトル計画は、私たち西側諸国、自由主義陣営の一員には、夢と希望を与えてくれました。米国民にはそれに加えて、誇りを与えました。アメリカ政府による有人宇宙飛行はこの日で打ち止め。アポロ計画につづくシャトル計画は「自由の国アメリカ」の象徴であるロナルド・レーガンーー太平洋のやさしさを併せ持った偉大な大統領ーーにより、ベルリンの壁を崩壊させることに成功し、現在に至ります。

 なぜアメリカ政府の一機関であるNASAのスペースシャトルには「夢と希望」が詰まっているのに、日本の政治には夢と希望がないのでしょうか?

 それは予算が透明化されているかどうか、です。NASAは、アポロ計画よりも少ない予算で有人宇宙開発をする必要性がありましたから、宇宙を行ったり来たりする「シャトル」という名前に夢と希望を込めて、連邦議会の予算取りをしたんでしょう。ニューヨークの地下鉄は何号線というように、番号がついているのですが、たぶんイチバン短い路線は「シャトル」といって、番号がついてないかったと記憶しています。そのように、気楽に宇宙を行ったり来たりする。だから、第1号のコロンビアが宇宙に行ったとき、私は7歳で、NHKでずっと見ていましたが、打ち上げ後に、「コロンビア」が月に向かわないと知ってがっかりしました。そして、最初のフライトでは宇宙空間で、断熱パネルがたしか数千枚はがれるアクシデントがありましたが、これはNHKを見ながら、肝を冷やしました。コロンビアの翼が黒いのに、他のシャトルは色が違うのは、この断熱パネルの問題だと思います。そうやって透明化しているから、予算が取れるんですよね。フライトの全行程はNASAがもつケーブルテレビで完全生中継されていました。

 シャトル計画はもっと早く終わる予定でしたが、連邦議会で追加予算がつき、2011年7月まで可能になりました。これにより、奇妙奇天烈な偶然が起きました。ラストミッションが帰還した米東部時刻の7月21日というのは、アポロ11号のニール・アームストロング船長とエドウィン・オルドリン飛行士が月面歩行(ムーン・ウォーク)をしてからちょうど42年目ということになりました。それを聞いて、私はアメリカ政府も有人宇宙計画を復活させて欲しいと思いました。

 日米がしっかりと手をつなぎ続けることで日本は安定します。日本とアメリカは隣国です。太平洋を東に向かえば、ハワイ、そして、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスがあります。日本は長年、太平洋の防波堤として、反共の砦の役目を務めてきました。まずは外為特会の透明化が必要です。永遠の同盟国とともに、この危機を乗り越えるために。

 民主党代表選なんかやっている場合ではありません!

コメント
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