菅直人総理(民主党代表)は2011年8月12日(金)の閣僚懇談会でちかく総辞職する意向を示し、民主党代表選が8月28日(日)ないしは閉会後の9月に行われる見通しとなりました。また総理がかわるのは残念です。歴史の変革期には、このようなことは多いです。例えばインドネシアのスハルト大統領・韓国の朴正煕政権終了後、短期間のリーダーが続きましたが、今は中期的な任期の安定したリーダーが政治をしています。日本も次の首相で、しっかりと「ルール・オブ・ザ・ゲーム」(公選法、国会法、内閣法、国家行政組織法)をつくって、安定した政権交代可能な政治をつくっていきましょう。
次期民主党代表では、現時点で財務大臣の野田佳彦さん(当選5回、54歳)、農相の鹿野道彦さん(当選11回、69歳)、元民主党国会対策委員長の樽床伸二さん(当選5回、52歳)、元環境大臣の小沢鋭仁さん(当選6回、57歳)、前国交大臣の馬淵澄夫さん(当選3回、51歳)が有力となっています。民主党代表選は”1人区””単記式”の投票ですが、私たちの衆院選や首長選と違い、1回目で過半数を満たす候補者がいない場合は決選投票があります。ですから、リードしている野田さんが盤石とはいえず、まだまだ分かりません。できれば最後は話し合いによる1本化がいいのですが、「出来レース」と呼ばれかねず、難しいところです。
昨年9月の代表選で、菅直人陣営の推薦人25人中8人なのに対して、小沢一郎陣営では推薦人25人中1人に過ぎないということを指摘しました。新進党員だった人の数のことです。
勘違いが多いのは、小沢一郎氏は1994年の新進党結党時に幹事長、1995年の参院選勝利時は幹事長で、第2回党首選で党首になり、1996年の第41回衆院選敗北後も党首に居座り、1997年に一方的に解党宣言しました。この間、つねに幹事長か党首のいずれかにいたので、”新進党同窓会”は“小沢氏を囲む会”であるという勘違いが多くなりますが、実際には”新進党同窓会”とは”小沢一郎被害者の会”です。だから小沢候補と対抗した菅総理に8人もの推薦人がついたのですが、「昔のこと」なので誰もそれを話さないので、私がこうやってブログで指摘しないとなかなか見えてこないのです。岡田克也さんは1期生議員のケータイに電話たさい、1期生が「私は政策でこれから考えて決めます」と答えたのに対し、岡田さんは「いや、違うんだ。今度の代表選は、脱小沢体制を構築する選挙なんだ」として菅候補に投票するよう説得しました。
そして、この1年間。小沢一郎氏は選挙の公正さに疑義を唱えていないのに、民主党政権を妨害してきました。自民党や公明党が求める「政治とカネ」の説明責任(アカウンタビリティ)では、衆議院政治倫理審査会ではなくニコニコ動画で“説明”するという国会軽視を続けました。ことし1月31日、検察審査会によ刑事起訴されたときに、常任幹事会が「無罪確定まで党員資格停止で裁判にできるだけ専念してもらう」温情判決を出したのに、かえって恨みを持ったようで、2月17日には「16人による会派離脱届け」騒動で「3分の2」構想を砕きました。このため、特例公債法案をめぐる与野党修正協議となり、統一選をはさんだ長期の協議の結果については、三宅雪子氏ら小沢グループが「マニフェスト(一部)撤回で政権交代の魂を売った」と因縁をつけるチンピラ風情。
それはさておき、有力候補者の一人が、雑誌で「日米同盟は公共財であり、最大の資産だ」という趣旨を書いており、賛同します。やはりわが国は、経常収支黒字国でもありますから、過去に築いた資産を取り崩し、あるいはミドルリスクで投資しながら、食べ長らえていくべきでしょう。そうなると、政治による、利益の最適な配分がますます必要になってきます。
私は「新進党」という公共財を使えばいいと思います。「新進党」は沈没船ではありません。廃止された青函連絡船「羊蹄丸」のように、引退船です。それが昨年9月の25人中8人の結束につながっています。人間ですから、「小沢被害者の会」という「憎しみ」のつながりもありますが、当選している政治家ですから「新進党懐かしいなあ」「小沢憎し」と表では言いません。だから見えにくいのですが、ただ、実はもっとも熱い政治家である、岡田さんの小沢の息の根を止めるための鬼のようなパワーは、この憎しみから生まれているのです。人間ですから。
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3党合意で活躍した自民党政調会長の石破茂さんは、小沢氏が起訴された翌日(2011年2月1日)の衆・予算委員会でこうかたりました。「小沢さんの問題。総理、この話にそろそろ切りをつけませんか。総理は在職三十年、私も二十五年になります。その多くを、小沢さんなのか小沢さんではないのかということに費やしてきた」「ずっと、この長い間、本来我々は議論をすることがもっとほかにあったはずだ。そういう議論に我々は時間を費やすことではなくて、それは新進党であり、あるいは今の民主党もそうかもしれない、小沢さんなのか小沢さんじゃないのか、そのことに物すごく時間を費やしてきた。このことの国政の停滞、これに切りをつけないと」「私たちは、国会議員をやっていて本当にむなしくなったことがある。きょう一日きょう一日、また小沢、小沢じゃない、私はこういうことをやるために国会議員になったんじゃない、そういう思いを持ちました」と話しました。
「またかよ!」とうんざりする代表選ですが、この代表選を小沢氏の影響力にくさびをうちこみ、怨念を越えた新しい政治のスタートにしなければいけません。民主党執行部が「大連立」と言っているのは、それにより、小沢氏の影響力を相対的に低下させるのがねらいです。今国会だけでも、会派離脱騒ぎ、不信任騒ぎと散々に振り回されてきました。もうやめましょう。
次に、4月29日(金)の衆院財務金融委員会でこんなシーンがありました。登場人物は野田佳彦さんと公明党の竹内譲さん。この2人は、政治改革総選挙の1993年夏の第40回衆院選で野田さんは日本新党公認、竹内さんは公明党公認で初当選。そして、1回生として細川・羽田内閣を経験した後、新進党結党に参画し、第41回総選挙に出馬したモノの、小沢一郎党首の「消費税5%絶対反対」という突然の抵抗野党転向で支持を失い、事実上敗北(議席は微増)した選挙で落選してしまった仲なのです。
「公明党の竹内譲でございます。野田大臣以下政府の皆さん、昼食もとらずに御苦労さまでございます。大変でございますが、ともどもに、しっかりとした議論をしてまいりたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。(略)」
[画像]公明党の竹内譲さん、2011年3月の画像、衆議院インターネット審議中継から。
「そこで、今度は歳入面からの質問をさせていただきたいんです」「(平成23年度第1次補正予算の一般会計への)外為特会からの繰り入れが2308億5896万1千円。ほかの繰り入れは何億なんですよね、(略)億円とか(略)億円とか(略)億円とか。ところが、この外為特会からの繰り入れは一千円までついている。非常に奇妙な感じがするんですよね。この数字の根拠を教えてください」。
この質疑に対して、野田財務大臣は次のように答弁しました。「いわゆる外貨建てなので、そういう形になったというふうに理解をしています」。
野田さんは今国会で、予算と予算関連法案の分離により、参院予算委員会の昼休みに衆院財金委員会で答弁するとったタイヘンな状態のなか、よく答弁しました。巷間言われるとおり、理解力に優れているし、体力があります。野田財務相の答弁は、今国会で3つぐらい気になるところがありましたので、まとめようかと予定していますが、はぐらかしも少ない、安定した答弁ぶりでした。ただ、この竹内さんへの答弁からすると、「外貨建て」のものを1次補正の税外収入に転用していたことになりますから、、これは外為特会の元本部分と取り崩したことになり、劇画「ゴルゴ13」で描かれるような事態です。
本来ならば、野党議員はここで攻め込むはずだし、竹内さんはそのテクニックもありますが、ここは「新進党同窓会」として武士の情けをみせました。
竹内さんは「いや、どうもそれは違うと思うんですよ。後ろの財務省、ちょっとフォローして」と大臣を助けます。なお、議事録では前記のようになっていますが、私は竹内さんは「それちょっと違うと思いますよ~~。後ろの人(財務相事務秘書官)に聞いた方がいいですよ~~」と言ったように記憶しています。議事録は後世の歴史家にも分かりやすいようにこうなっていて、竹内さんは同委員会の理事ですから自分で決裁しているでしょうから、これでいいでしょう。
野田さんは、「年金の二分の一に持っていくところの、その額の最後の足らざるところの調整という形で細かい数字になったということでございます」と答弁し、竹内さんは「そうですよね。(略)そうすると大体そのぐらいの数字になってくるということですよね」と和気藹々(わきあいあい)と実りある審議となりました。
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2月16日(水)の衆院予算委員会では、理事で公明党の富田茂之さんが質問に立ちました。富田さんは、第40回衆院選で初当選。新進党結党に参画し、第41回衆院選では小沢党首にブロック上位で登載され、再選しました。これは、創価学会や連合の支持を受ける候補者を名簿上位にして、組織票を掘り起こす作戦でした。ところが、小選挙区立候補者は名簿に重複させないという小沢氏の奇行が大混乱を招きました。なぜ奇行とまで私が言うかというと、この重複できるという改正公選法は、小沢氏らの主導でできた法律であって、自分でそういうルールにしておいて、「小選挙区で勝ってこそ、政治家だ」と、それはたしかにもっともな、筋が通った話しなのですが、法律と筋論の境界線があいまいで、命令を受ける方としては訳が分かりませんでした。そうやって新進党が解党し、公明党公認候補として第42回衆院選にのぞんだ富田さんは、組織票では当選ラインに足りず、落選してしまいました。同じ公明党でもいろいろなパターンがあります。現在は5期生です。
で、富田さんは、昨年9月の尖閣諸島問題のさざ波が残っていた1月に中国出張し、日中友好協会会長の加藤紘一さん(自民党)らと、国務委員(外相より格上)の戴秉国さんと会ったときのエピソードを披露しました。
「公明党の富田茂之でございます。実は、ことしの1月11日から13日まで、日中友好協会会長を務める自由民主党の加藤紘一衆議院議員に同行させていただきまして、この尖閣問題で前面に出てこられました中国の戴秉国国務委員や元駐日大使の武大偉朝鮮半島事務特別代表と会談をさせていただきました」「私にも質問の機会をいただきましたので私の方から戴秉国さんに、『実は以前に戴秉国さんにお会いしたことがある』、1997年と1998年の2回、当時まだ戴秉国さんは中国共産党対外連絡部の部長さんでしたけれども、今、民主党の幹事長をされている岡田克也先生とか、中川正春さんも御一緒だったんですが、当時、戴秉国さんとお会いしていろいろな話をさせていただいたことを御紹介しましたら、にこにこされて、『おお、新進党!!』と言われました。新進党で行きましたので、当時のことを思い出されたんだと思うんですが、よく覚えていらっしゃるなということでした」。
「新進党」というキーワード一つで和気藹々となった戴秉国国務委員は富田さんとけっこうディープな話になります。まず、分かりやすく、下のマンガにまとめました。
(作成 宮崎信行)
マンガでお分かりいただけたかと思いますが、富田さんの2月16日の質問を引用します。
「私は戴秉国さんに、問題が起きたときに岡田さんと直接やり合ったらよかったじゃないですかという話をしました。なかなか民主党の皆さん、中国とのパイプがないということで苦悩されていたと思うんですが、そういう話をしましたら、戴秉国さんも、そのとおりだ、直接話がしたかった、いろいろあってできなかったけれども、これからは一対一の直接の対話が大事だと思うと。会談が終わった後、わざわざ私のところへ歩み寄ってこられて、富田さん、岡田さんにちゃんとこの話を伝えてくれと言われたんですね。本当に大事なことだと思います、いろいろなパイプがありますから。私の方からは、さまざまなレベルでの対話のルート、例えば一緒に行っていただいた加藤紘一先生とか、政界を引退されましたけれども自民党の元幹事長だった野中広務先生とか、日中間で本当にいろいろなパイプをつくってこられた方々を、与野党関係なしに、そういった信頼関係を築いてきた方たちのルートを利用したらどうだろうかという話をしましたら、戴秉国さんも、そのとおりだと思うというふうに言われていました。それで、岡田幹事長にもその旨をお伝えしました」とのことでした。
このように、小沢一郎氏による解党宣言で、新進党員は、民自公にちらばってしまいましたが、今こそこの人脈を公共財として活用すべきでしょう。とくに民主党には地方議員や推薦首長が少ないという、震災復興では構造的な問題があります。こういったところを、公明党や、あるいは自民党に補って欲しい。これは国益のためです。また民主党の地方議員不足は構造的な問題ですから、責め立てても何のメリットもありません。
公明党代表の山口那津男さんは15日、記者団のぶら下がりで、大連立構想について、「まったく否定するものではないが、具体的に意思決定する段階ではない」と語ったそうです。これは、公明党という組織のしっかりした政党ですから、代表の一存ではなく、地方議員や、支持者・とくに創価学会員の意見を聞かないと決められないということを言っているのだ、と私は理解します。
衆参ねじれでは、民主党・国民新党と公明党の3党では、参議院で128議席。参院小沢グループが8人造反しただけで、またしても国政は混乱します。輿石東会長がしっかりと参院民主党をおさえてくれていますが、やはり、自民党も含めて大連立を申し出ないといけないのはこの現況があります。ただ、立ち止まって考えるよりも、走りながら考えるしか方策はありません。
わずか3年間だけ存在した新進党ですが、光り輝いていました。新進党員からの内閣総理大臣はいまだに一人も出ていません。菅直人首相で森喜朗首相退陣後に5代、親が町長の森さんも世襲とすれば、村山首相退陣以来8代連続で家業が政治の世襲議員の総理大臣の負の連鎖は断ち切ることができました。非世襲→非世襲というバトンタッチとなると、平成元年(1989年)の竹下→宇野→海部首相以来ということになります。日本は民主制の国です。
そして、念のため、言っておきますが、新進党員といっても、今国会で活躍しているメンバーは「小沢被害者の会」として心でつながっていますから、この公共財を利用して、小沢首相が誕生することは絶対にありません。夕刊紙などで、「小沢氏が公明党に接近」などと出ますが、それは、公明党・創価学会で第一線を退いた人と会って、お互いの存在感をしめそうとしているだけです。
怨念の政治を乗り越えるためには、小沢氏を乗り越えることが大事です。剛腕は「私たち国民の投票」だけで十分です。
政権交代ある政治を日本に根付かせるため、ルール作りが肝腎です。衆院の任期中は総理がかわらないようにする(ただしリコールはできる)ことが大事です。まさに訓政期であり、システムをしっかりつくっていきましょう。
そのためには・・・
新進党の枠組みを活用しましょう!
別段、排他的な意味でなく、各党の交渉窓口の要所要所に使えばいいと思うのです。
あの日と同じ澄んだ瞳で。
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