[画像]NHK国会中継入りの質疑で答弁する民主党の渡辺周さん、2013年11月6日(水)、衆議院インタネット審議中継から。
衆議院では民主党が野党集団で独走の気配になりました。
安倍首相は6月のNHK日曜討論で、「秋の臨時国会は成長戦略実行国会だ」と語り、予告通り産業競争力強化法案(第185閣法1号)も審議中ですが、関心は、特定秘密保護法案や閣議の議事録作成など「情報のあり方国会」となってきました。小泉首相の「郵政国会」以降、野党がパラダイム(与野党の対立軸)を変えた例では、「年金国会」、「ガソリン国会」がありますが、「情報国会」はより前向きに、30年語り継がれる憲政の名場面になるかもしれません。
きのう2013年11月6日(水)NHK国会中継が放送されました。ただ、10月24日に両院の予算委が終わっていたのと、「水曜日の午後3時から午後5時まで」という、唐突感のある日程なので、あまり注目されなかったようです。ここでは、NSC設置法案をめぐり、政府案と民主党単独修正案が両方議題になりました。
委員長席から、安倍首相、菅官房長官、小野寺防衛相、民主党の渡辺周さん、長島昭久さん、後藤祐一さんの6人が座りました。この第一委員室の椅子に民主党議員が座っている姿は、今や「奇妙な安定」にあり、違和感がないようです。Twitterなどで「なんで国賊ミンスが座ってんの?」「民主党の答弁の国益って中韓の国益ですか?」といった反応はなし。もはや民主党が閣僚席に座っていることに世間の違和感はなく、意識しているのは、筆者あるいは、閣僚経験がない3人の答弁者(笑)という、「奇妙な安定」。
そして民主党案の「修正4項目」のつきつけは、安倍首相の「傾聴に値する」との答弁に加えて、法案に反映、附帯決議に反映、反映されずという落としどころに。前の任期中の野党・公明党のようなテクニックを見せて、民主党修正案撤回。自・民・維・公4党共同修正案に、採決ではみんなの党も賛成するという巻き込み方で、きょう7日(木)の本会議に上程されました。
NSC設置法案(183閣法73号)の採決では各党が討論を申込み、民主党からは後藤祐一さんが登壇し、賛成討論しました。この後、採決し、自・民・維
公・み5党の賛成で可決し、参議院に送られました。
ここで、階猛さんが茶封筒をかかえながら、後藤さんに合図し、黒革のカバンを持った枝野幸男・元行政刷新相とひな壇、右側に登壇。伊吹文明議長が「特定秘密保護法案」(185閣法9号)と「情報公開法改正法案(185衆法1号)」を同時に議題にすると宣言。左側のひな壇には安倍首相と森まさこ国務大臣。ちなみに、森大臣は首相の真隣に座りました。以前、伊吹議長が「消費者被害の集団的回復法案」(参院審議中)について、森消費者担当相が答弁するときに、「あんなに遠くに座っている必要あるの」と事務総長に聞いていたので、国会改革の一環もあり、首相の隣に座ることになったのでしょうが、森さんもまんざらでもないんでしょう。
午後2時から午後4時20分まで、安倍首相、森大臣、枝野提案者、後藤提案者、階提案者はひな壇に登りっぱなしになりました。一般傍聴席では、「あら、枝野さんよ」との声がもれ、ここでも「奇妙な安定」。後藤さんが答弁者として2度目の登壇をしたときにも、そのことへのヤジはまったくありませんでした。ただし、さすがに先輩よりは拍手が少なかったようです。
[画像]情報公開法改正法案の趣旨説明に立つ、民主党の枝野幸男さん、2013年11月7日(木)、衆議院インタネット審議中継から。
また、特定秘密保護法案ということで、左翼が傍聴に来るのかなと思いました。きょうは入れ替えを入れたら、一般傍聴席だけで300人~400人、さらに外交官席も60人以上、公務員席も15人以上が詰めかけましたが、3人以上のグループの左翼はいなかったようで拍子抜けしました。1~2人組の左翼も、最後まで聞いたとしても、10人未満でした。左翼が衰えたというよりも、世論の適正化といえるでしょう。一般傍聴席が300人を超えていたのは、後援会の国会見学旅行のようで、秋の行楽シーズンだなあと感じました。
森大臣と枝野さんの趣旨説明の後、自民党からは城内実さんが質疑。「日本版NSCができたので、各府省が安心して情報をNSCに出すためには、特定秘密保護法が不可欠だ」と質問演説していて、意外とスケールの小さい政治家だなあとがっかりしました。
続いて、渡辺周さんが質疑者として登壇。ちなみに、野党の議運筆頭理事が、一般法案の質疑で登壇するのは極めて異例。わずか56名の野党第1党ですが、力のある者にはおいしい。「為政者、権力者が暴走しないように、国民がチェックするには情報の管理と公開が不可欠です」としながら、「私たちも3年3か月間、政権を預かり、国民の生命と財産を守るためにすべての情報を公開するわけにはいかないことを知りました」といった趣旨の演説をしました。「政府の法案の中に、「その他」が11か所もある」として法律に官僚の抜け穴があるとして、「大臣と事務次官が追認することになりかねない」としました。民主党の法案は「政府は国民がアクセスしやすくすべきだ」として、「政府が情報公開を拒否したときの最後の砦となるのが情報公開訴訟の場です」「インカメラ審理が必要だ」と語りました。
答弁に立った後藤祐一さんは改正のポイントとして、情報公開法第1条の「国民主権にのっとり」をより踏み込んで、「国民の行政の監視および国民の行政への参加」「行政機関が情報を自主的に提供しやすいようにする」として、不開示とできる情報も「5項目」で明確にするとしました。
[画像]委員会答弁、本会議討論、本会議答弁と八面六臂の活躍をみせる民主党の後藤祐一さん、これは2013年11月6日(水)のNHK入り質疑、衆議院インタネット審議中継から。
階猛さんも答弁し「国民の利便性に資する開示情報を国民に分かりやすいかたちで提供できるようにする」と語り、「行政機関の組織、業務、所管を分かりやすくする」として、例えば企業の監督官庁がどこか、といった情報を分かりやすく提供するのも改正法案のねらいだと説明しました。
[画像]情報公開法改正法案の答弁にに立つ、民主党の階猛さん、2013年11月7日(木)、衆議院インタネット審議中継から。
維新の丸山穂高議員への答弁で、安倍首相や森大臣は「(尖閣諸島で衝突した)中国船舶(の海上保安庁が所有していた動画)」「TPP交渉」「原発の設計図」は特定秘密にならないと答弁。しかし、テロ防止目的は特定秘密なので、「原発の車の出入り」は特定秘密になるとしました。さらに「(刑法の)住居侵入(罪での立件)にあたらない程度で住居に侵入し、会議室に盗聴器をつける」取材活動は、法律による処罰の対象になりうるとしました。ちなみに会議室に盗聴器をつけないとスクープをとれない記者はそうとうに無能な記者だと思いますが、それは別として、これらの「特定秘密」「処罰対象」になる案件が、警察庁・47都道府県本部の情報であることに、この法案への答弁がゆれている理由がひそんでいると考えています。
みんなの党の井出庸生さんは「西山事件は国家の大きな過ちであり、民主党政権が一定程度の名誉回復をなしとげたことはすばらしい」と質問演説し、枝野さんは「私どもの政権を担った時の西山記者事件へのご評価ありがとうございます」と答弁しました。ところで、西山記者事件で思い出したわけではありませんが、1日(金)の衆・法務委で横路孝弘さんが質問した後に、次の議員が「前議長の横路先生の格調高い質問の後ではやりにくい」と切り出して質問しましたが、きょう午前中の災害対策特別委員会でも「元防災担当大臣の中川正春先生の格調高い質問の後ではやりにくい」とやはり次の議員が言っていました。今調べたら、これ同じ議員で、今国会でのみんなの党の議員は、このような常套句で話し出しているようです。まさに民主党が2位集団から飛びぬけだした感じです。
なお、枝野さんは趣旨説明の最後に「行政に特定秘密(の権利)がなされるなら国民の知る権利を高めないとつりあわない。政府が特定秘密を定めるなら第3者外部者によるインカメラ審理が担保されなければならない。少なくともその2点の一部修正の必要はある」と語りました。
公明党の大口善徳さんは「閣議などの議事録を作成し30年後に国立公文書館に移すことと裁判所によるインカメラ審理が必要であることの2つを指摘して、以上で質問を終わります」と語り、安倍首相は「公文書管理法改正法案は、先日の参・本会議での答弁の通り、明治以来の閣議のあり方を検討したうえで提出したいと考えています」と応じました。具体的な提出時期には言及しませんでした。
◇
特別会計法などの改正法案(185閣法13号)が自民党・民主党・公明党・維新・生活の賛成、みんな・共産・社民の反対で可決しました。みんなの党は修正案を提出しましたが否決されました。この法案は、民主党政権時代につくられたものです。外国為替特別会計の積立金(すでに円建てになっている物)が廃止・一般会計化します。社会資本整備特別会計も廃止します。もちろん、未来の手数料に手を突っ込んで日本列島に98の空港をつくってしまった空整特会は、そのまま一般会計化しては「犯罪の隠蔽」ですので、区分経理となります。外為特会の運用が一部外部委託されるようです。
農村漁村再生エネ法案(185閣法8号)も民主党政権時代の検討をふまえて、全会一致で可決し、参院に送付。
条約も処理が早く、「日本パプアニューギニア投資協定」(185条約1号)、「日・コロンビア同」(2号)、「日・クウェート同」(3号)、「日韓中同」(4号)、「日イラク同」(5号)と、「日本インド社会保障協定」(6号)の6つの条約の承認を求める件が全会一致で可決し、参院に送られました。委員長報告によると、すべて、2012年締結なので、これも民主党政権時ということになりますし、国会承認もようやくペースがはやまってきました。
法案では、配偶者同行休業法案について、衆・法務委で「裁判官」(185閣法12号)、衆・総務委で「国家公務員」(10号)、「地方公務員」(11号)が審議入りしています。衆・総務委では原口一博さんら民・共・生・社4党提出の「地方公務員臨時職員に手当を出す法案」(185衆法3号)がセットで審議入りしてもらっています。
配偶者同行休業法案については、「無給とはいえ共済年金の半額は税金なので復職後もしっかり働いてほしい」(自民党・橘慶一郎さん)、「こういう法案は条例で定めるべきではないか」(維新・杉田水脈さん)、「福岡県の初代バンコク所長は夫婦とも県職員だったが奥さんは悩んで退職したので前からあればよかった」 (みんな・佐藤正夫さん)といった意見が出ました。「国会職員」の法案も、本会議で趣旨弁明のうえ成立すると思われます。こういうのはやはり国会に近いところで働く人は政策要望が実現しやすいです。私たち一般国民もオープンガバメントを手に入れて、政策要望をすみやかに実現できるようにしましょう。
一方、参・経済産業委では、衆議院送付の電力システム改革法案が審議入りしましたが、みんなの党が参院先議で単独提出した対案は審議入りしておらず、みんなの党の国会戦術は立ち往生しています。
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