【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

強姦致死を強盗致死より重罰化へ 刑法改正法案を松島法相が指示 民法債権編改正法案より優先すべきだ

2014年09月13日 14時45分05秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[写真]南野千恵子元法相と松島みどり新法相、(南野元法相は首相官邸松島法相は法務省ウェブサイトから)。

 松島みどり法相は、就任時の2014年9月3日(水)の記者会見(首相官邸、法務省双方)で、平成16年改正刑法の第181第2項で「(強姦罪もしくは準強姦罪)またはこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、
 無期または5年以上の懲役に処する」との条文が、第240条の「強盗が、人を負傷させたときは
 無期または6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑または無期懲役に処する」との条文と最低刑が逆転していると指摘し、「絶対に正当に逆転するように,今の状況と反対になるように,これは議論を始めて,進めてもらいたいということを先ほども幹部会で具体的に申しました」と語りました。

 議事録をみると、実際にこの改正法律案の質疑は、松島さんがトップバッターとして質問しています。

 (第161回臨時国会の平成16年11月9日火曜日の衆議院法務委員会の第5号議事録

 ちなみに、女性の法相は日本では過去に5人います。諸外国では法相に女性は比較的少ないのですが、日本では組織犯罪対策を国家公安委員長が分掌していることも関係しているとみられますが、女性法相はこれまで多くいました。この平成16年改正では、日本看護協会出身の自民党参議院議員、南野千恵子法相と松島みどりさんの質疑ということで、自民党では、1期生の声を法律に落とし込むには、大臣になるまでかかるということかもしれません。偶然にも、赤いジャケットの清和会女性議員ということになりますが、南野法相は退任後も、看護協会が関係した法律案の採決を衆議院本会議場の参議院議員傍聴席で赤いジャケットで1人見守り、可決するとぺこりとお辞儀をして退席していく姿を複数回見ました。引退して、高階恵美子さん(現厚労政務官)にバトンタッチをして、特定の出版社に数百万円の寄付をして残金ゼロにして国庫返納ゼロで、後援会(総務大臣届出資金管理団体)を解散したことを除けば、しっかりと仕事をした参議院議員といえます。

 松島法相は次のように語りました。

 「かつて当選1・2回の頃は,私は法務委員会のメンバーで理事もやりました。そのときに,社会の常識と離れている,おかしいと思った法律がございました。刑法の中で,物を盗るより女性,性犯罪の方が軽く扱われている。強姦致死傷。強姦してその後,死に至らしめたり怪我をさせたりしたときに,法定刑は懲役5年以上で,あるいは無期懲役。死刑が入っていないんです。無期懲役です。一方,強盗の場合の強盗致傷。怪我をさせただけで,強盗して,かつ死なせたのではなく怪我をさせた場合でも懲役6年以上又は無期懲役で,最低刑が重い。強盗致死の場合は死刑又は無期判決です。おかしいではないかと,私はかつて法務委員会で問題にしたことがあります。そのときに出てきたのは,明治以来のそういう女性蔑視の中で,法律もだんだんと差が縮まってきたんだと。これは絶対に正当に逆転するように,今の状況と反対になるように,これは議論を始めて,進めてもらいたいということを先ほども幹部会で具体的に申しました」と語りました。

 刑法177条の強姦(ごうかん)とは、暴行または脅迫を用いて、13歳以上の少女を姦淫した場合に成立する、とされています。13歳未満の女子は手段のいかん、同意の有無を問わず、韓印したら成立します。姦淫とは、男性生殖器の少なくとも一部が女性生殖器に挿入することを言います。

 ちなみに、新聞報道では、強姦ではなく、婦女暴行と言い換える慣行が、なぜか定着しています。

 強姦致死が懲役5年以上、強盗致死で懲役6年以上ということで、これはたしかに逆転現象といえ、その解消は必要でしょう。

 私は、下層社会の方とも比較的フェイストゥーフェイスの交流をしてきており、女性で集団強姦に遭った傷を抱えながらも、「遊んでいた自分が悪かった」と言い聞かせる女性を一人だけ知っています。ただ、「遊んでいたから」と自分を責めることで、その心の傷をなぐさめているようでした。とくに、強姦が処女喪失であれば、これは強盗による財産侵害とは比べ物にならない話であり、重罰化は当然でしょう。同意の有無は、十分に、警察、検察、裁判、弁護でやればよく、法律は今すぐ変えるべきです。

 待ったなしです。刑法改正案は第188通常国会に速やかに出すべきです。一方、民法(債権法)を改正して連帯保証を公証人にやらせる改正案は、こんなくだらない法案の成立が遅れても困る人は一人もいないので、提出そのものを見送るのが当然と言えます。

(関連エントリー2014年8月29日付

国家の終焉 民法(債権法)改正要綱仮案まとまる 「連帯保証人は公証人に口述」



 限られた審議日数の中で、法案の優先順位を判断する理事会は、各委員会とも非公開のため、国会審議でも謎が多いところです。大臣の諮問の順番ではなく、「待っている人」のための国会であるためには、松島法相の悲願である刑法改正法案が優先し、民法改正法案が先送りになるのは、しごく当然のことであり、民法改正法案の提出そのものを先送りし、中止すべきでしょう。

[国会会議録データベースから引用はじめ]

第161回国会 法務委員会 第5号
平成十六年十一月九日(火曜日)

(前略)

○南野国務大臣 刑法等の一部を改正する法律案。

 刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 近年、我が国の治安水準や国民の体感治安が悪化しているとの指摘がなされていますが、その大きな要因の一つとして、人の身体に攻撃を加え、その生命や身体等の重要な個人的法益に重大な危害を及ぼす凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向が続いていることが挙げられます。
 こうした中で、平成十五年十二月、犯罪対策閣僚会議において、犯罪に強い社会の実現のための行動計画が取りまとめられ、当面取り組むべき重点課題の一つとして挙げられました治安回復のための基盤整備の項目の中で凶悪犯罪等に関する罰則を整備することが求められましたが、特に凶悪犯罪等については、刑法や刑事訴訟法に定められている有期刑や公訴時効の期間のあり方等が現在の国民の正義観念に合致しているのかという問題が、かねてから指摘されていたところでもあります。
 そこで、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対し、最近の犯罪情勢及び国民の規範意識の動向等を踏まえた上で、事案の実態及び軽重に即した適正な対処が可能になるよう、刑法及び刑事訴訟法等を改正し、所要の法整備を行おうとするものです。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、刑法を改正して、有期の懲役及び禁錮を一月以上二十年以下とするとともに、有期の懲役及び禁錮を加重する場合においては、三十年にまで上げることができるものとしています。
 第二は、刑法等に規定された個々の凶悪犯罪等、すなわち、強制わいせつ、強姦、強姦致死傷、殺人、傷害、傷害致死及び強盗致傷等の各罪の法定刑の上限または下限を見直すとともに、二人以上の者が現場において共同して強姦または準強姦の罪を犯した場合等について、新たな処罰規定を設けるものです。
 第三は、刑事訴訟法を改正して、凶悪犯罪等についての公訴時効の期間を延長するものであり、死刑に当たる罪については二十五年、無期の懲役または禁錮に当たる罪については十五年、長期十五年以上の懲役または禁錮に当たる罪については十年とするものです。
 その他所要の規定の整備を行おうとしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
○塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております本案審査のため、明十日水曜日、参考人として東京都立大学法学部長前田雅英君、日本弁護士連合会副会長大塚明君、朝日新聞編集委員藤森研君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省保護局長津田賛平君、文部科学省大臣官房審議官山中伸一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。
○松島委員 昨年の刑法犯認知件数は、全体では前年に比べて一・三%減っており、これは九年ぶりの減少です。しかしながら、殺人は前年に比べ四・〇%増加、強盗は九・七%増加といったぐあいに、凶悪犯罪はふえております。そして、内閣府がことし七月に行いました治安に関する世論調査では、日本は安全で安心して暮らせる国だと思うかという質問に対し、そう思うと答えた人は四二%、そう思わないと答えた人がこれを上回る五五%となっております。
 こうした中で、今回、刑法を改正し、人の心身を傷つける犯罪に対する法定刑をこれまでより厳しくすることは、全体としてはとても望ましいことだと私は考えております。被害者や遺族によるあだ討ちが禁じられている以上、犯罪者には、被害者が納得のいく形で罪を償ってもらわなきゃいけない、これを国家が定めなくてはならないと私は考えるからです。
 この刑法は、明治四十年、一九〇七年に制定された後、用語の改定などはありましたけれども、刑期の見直しは初めてだといいます。何と制定以来九十七年ぶりということでございます。
 人生五十年と言われた時代と寿命がこれほど長くなった現代に同じ刑期ではおかしいと考えます。これまで犯罪者の人権ばかりを口にする反対勢力の妨害などもあって、刑期が改定されないまま今日に至ったことには非常に怒りを覚えます。しかしながら、この歴史的改正に法務委員として立ち会えたことは大変うれしいことでございます。
 きょうは十一月九日でございます。一年前のきょう、私たちは国民の代表として選ばれ、国会に出てまいりました。国民の声なき声を最も代弁するのは、わかっているのは、法律家でもなければマスコミでもなく、私たち国会議員だと、政治家だと私は思っております。こういう立場に立ちまして、今回の改正で疑問に思う点を挙げ、質問とさせていただきます。
 一番目は、今回の法改正で、強盗致傷罪は無期または六年以上二十年以下の懲役と非常に重い刑でございます。一方、殺人罪は死刑または無期または、ここから先ですが、五年以上二十年以下の懲役となっております。確かに死刑を含んではいますけれども、最も軽い場合は強盗致傷よりも刑期が一年短い。これは一体どういうような場合を想定しているのでしょうか。

(以下略)

[引用おわり]


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