タイトルからは雄大なテーマ性を感ずるが、そのとおり! 時間軸の長~い地震火山研究の話である。素人にはやや難解なテーマであったが、理解できた部分をレポートすることにしたい。
北大の地震火山研究観測センターでは若手研究者がフットワーク軽く世界へ出て、各地で観測・研究をしているという。
地球科学という研究対象の時間軸が千年、万年を単位とする事象から地球の謎を解明していく分野である。とすると、日本という狭い地域に起こる現象だけを対象にしていてはどうしてもサンプルが少ないという。そこで世界に出て、今生起している特徴的な現象を観測することによって、日本の各種現象の解明や予測に役立てたいと考え積極的に海外における観測・研究を進めていると観測センター長は語った。
3月20日(水)午後、北大の学術交流会館において行われたシンポジウムは、関係者及びアマチュアの研究者、あるいは関心のある市民を対象として開催されたようだが、そこへ闖入してみた。
シンポジウムは五つの講演から成っていた。その演題と講師を羅列すると、
【講演1】パプアニューギニア、ラバウル火山における火山性津波の調査
西村祐一(理学博士、助教)
【講演2】ニュージーランド、ホワイトアイランド火山における地球電磁気観測
橋本武志(理学博士、准教授)
【講演3】インドネシア、コロン火山における地震・地殻変動観測
青山 裕(理学博士、助教)
【講演4】ノルウェー、北大西洋における地震・地殻変動観測
村井芳夫(理学博士、准教授)
【講演5】ロシア、カムチャッカにおける地震火山観測
高橋浩晃(理学博士、准教授)
というラインナップだった。各氏にとっては研究の概要を報告しただけだったのだろうが、聞く方の私にはなかなか難解な内容だった。理解できた範囲内で橋本氏と高橋氏の二人の報告をごく簡単にレポートしたい。
※ 講演で橋本氏が示した世界地図です。よ~く見てください。ニュージーランドの地図ですが、
上下が反対になっています。それを逆転して提示しているのです。分かりますか?
橋本氏の研究は火山内部における温度変化を観測(推測)する研究である。
火山の岩石には磁鉄鉱など鉄分が豊富に含まれている。鉄分には磁性がある。その磁性は温度が高くなるに従い弱くなっていくということだ。(600℃くらいで磁性が失われる)
この性質を利用してヘリコプターなどで火山上空において磁性を計測して、その変化を見ることにより、火山内部の温度変化を推測する研究を諸外国の研究者と共同で行っていたということだ。
そしてその成果を現在、浅間山や有珠山を研究対象として研究を進めていると語った。日本においては有人ヘリコプターから、無人のヘリコプターに代えてより安全な観測体制も目ざしているという。
この研究が火山の噴火予知に繋がることを期待したいものである。
※ 講演する橋本武志氏です。
次に高橋氏の研究は、日本列島を囲む地下のプレートがせめぎ合うことで日本の国土が伸び縮みしている状況を対岸であるロシア、カムチャッカから観測する研究である。
日本列島は、東から太平洋プレートが、西からはアムールプレートが、そして日本列島そのものはオホーツクプレートに載っているという世界的にも複雑な(危険な)地域だそうだ。(さらに複雑なメカニズムが存在するのだが、それを割愛して)
現在、ロシア沿海州が載っているアムールプレートは日本に近づくような運動をしているらしい。氏らが1996年から始めた観測ではその動きは年間約1㎝程度だそうである。この動きが1993年の日本海中部地震、1993年の北海道南西沖地震、1940年の積丹半島沖地震を起こしてきたという。この経過からいうと、次に危険なのは北海道北西沖が考えられるという。ただ、その後の観測でプレートの動きがやや鈍ってきたのでその緊迫性は今のところやや遠のいたと言っていいそうだ。
しかし、そのことは地震の可能性が無くなったということではなく、奥尻地震クラスの地震が500年程度のスパンの中で起こる危険性を依然もっていることをデータは示しているという。
※ 講演する高橋浩晃氏です。
地震予知とか、火山の噴火予知は、天気予報のように簡単ではないことは我々素人も報道などを通して理解しているつもりである。そうした中、こうした科学者たちがその謎の解明に取り組んでいることの一端を知ることができたことは私にとって無益ではなかった。
こうした科学者たちの真摯で懸命な努力によって、地球の謎が一日も早く解明され、3.11のような悲劇が再び繰り返されないでほしいことを願うばかりである。