’80年代前半の時のこと。当時多感なモラトリアムの中学生だった私は、坂口良子という人に夢中になってしまった。「池中玄太80キロ」での暁子役を演じていた彼女は、本当にカッコよかった。
私は彼女がイメージキャラクターだった日糧パンに行って、彼女のポスターやらカレンダーを入手し、嬉々として部屋に貼っていたものだった。
そして思いあまって買ってしまったシングルレコードが、この「まるで少年のように」なのである。
♪恋をした女は 妹になり 姉になり
恋をした女は そして 最後に母親になる
良子さんの、ちょっと息が続かない感じのヴォーカルと、この歌詞のフレーズに、私は参ってしまっていた。
・・・交際していた頃。思えば、私の妻は、私にとってはいつも「姉のような存在」だったように思える。決して「妹」ではなかった。まあ、歳が同じということもあるのかもしれないが。
そして今は、まごうかたなき「母親」だ。この曲の歌詞は、かなりいいところを突いている。さすがは松本隆氏だと、あらためて感嘆させられる。
時たまノスタルジーから、この曲をクルマで聴いたりしているのだが、ウチの女性陣は「その気持ち悪い歌、止めてヨ!」とのたまう。
・・・いいのだ、いいのだ。家族だからといって、全てが分かりあえるワケではないのだから。ある程度の「のりしろ」は、一緒に暮らすのには必要不可欠だ。
全てを分かり合おうとすると、結婚生活は息苦しくなる。お互いに分からないところがあっても、それはそれでいいのだと思う。