マニュアルトランスミッションのクルマが絶滅寸前の、この日本。
だがしかし、欧州においては、今もMTが主流である。
プジョー208GTi(6MT)の試乗車が札幌に存在するという情報をキャッチした我々取材班は、いそいそとプジョーのお店に向かった。
まばゆいくらいに反射する、6MTのアルミシフトノブ!
当然ながら、3ペダルもアルミ製。クラッチペダルはやや左寄りにオフセットされており、フットレストは無い。
左足の休息場所は、クラッチべダル左横のカーペットということになるが、あえてノンプロブレムと言ってしまおう。それは、人間の方が、慣れてしまえばいいのだ。
ブラック基調の室内には、そこここに赤のアクセントが施され、気分を高揚させる。
メーターパネルは、ステアリングの上から俯瞰する形になる。
スポーツシートは大きめで、しっかりとした造り。
固目の表皮のそれに体を預けると、なんだか血中濃度が高まってくるのを感じる。脳梗塞を起こさないよう、留意しよう。
ドライビングポジションを入念に決めて、走り出す。
クラッチミートに気難しいところは一切なく、ミートポイントも適正。今年の1月に「Allure」の5MTを運転した時のような違和感は感じなかった。
尾車氏・ニータ氏・セールスマン氏・私の計4名での乗車だったが、200psを絞り出す1.6リッターターボエンジンは、痛痒なく加速。軽快というよりは、中身の詰まった弾丸が飛んでいくような感覚だ。
しっとりと適度な重さの、ステアリング。太めの革巻きのそれは、操舵フィールも良好で、思わず口元が緩む。
大パワーを前2輪で受け止める足回りも、小さいクルマとは思えないフラット感。エンジンマウントもしっかりしており、低速ギアでスロットルをラフにON-OFFしても、スナッチひとつ出ない。巡行中にはコツンコツンと路面の凹凸を拾うものの、ヒョコヒョコとした挙動は無く、スポーティかつ上質である。
また、後席の広さも合格点。ニータ氏と私が並んで座っても、むさくるしさを感じるようなことは無かった。
このクルマの欠点を一つ挙げるならば、斜め後方視界の悪さであろうか。リアウインドウが外観から想像するよりも小さく、Cピラーが太いからだ。狭い場所でのパーキングには、慣れを要するかもしれない。
また、トランクルームにしっかりと積まれたスペアタイヤの存在も、見逃せない。
過去数度パンクの憂き目に遭っている私にとって、これは、心強い保険なのだ。
加えて、リヤシートを畳んだ際に、やや傾斜は残るものの、段差はほぼ無い。この点についても、大いに評価したい。
いやあ、面白かった。今年乗ったクルマの中で、この208GTiが、私の中ではベストである。
このクルマの税込本体価格は、299万円。それは、ゴルフ7の「TSI Highline」とまったく同じ価格なのだ。
理論で選ぶなら、VW。感性で選ぶなら、プジョー。そして私は、プジョーを選ぶ。これ、ホント。