単身赴任の特権

　「お父さんが一番風呂」などという封建的制度は、我が家においては、崩壊して久しい。
　女性陣いわく、「パパの後は汚い！」のだそうだ。
　たとえ私が一番早く帰宅していたとしても、まずは娘たちが入浴し、続いて妻が入り、そして最後が私。
　それが、無用な家庭争議を起こさないための、暗黙のルールだった。

　だがしかし。一昨年より私は単身赴任となった。
　単身赴任地では、一番風呂の恩恵を、誰に遠慮することなく、享受できる。

　　　　
　何が嬉しいかって、やはりそれは「花王のバブ」を、満喫できることに尽きる。

　　　　
　　　　
　バブを湯船に投入すると、炭酸ガスがシュワシュワと浮かび、香りがふんわりと鼻腔を撫でる。
　そして、それが完全に溶けきった頃。カラダも温浴効果で、いいあんばいに、あったまる。
　この、バブの一連の流れを愉しめるのは、一番風呂の特権である。
　妻子よ、御免。