尾車氏の進言により、ホンダのお店へ。
お目当ては、もちろん、「S660」である。
試乗させていただいたグレードは「α」(6MT:税込車両本体価格221万2400円)だった。
軽自動車枠内の小さなクルマだが、実車はなかなか存在感がある。
フロント15インチ・リア16インチのタイヤ。
切り詰められた、オーバーハング。
まさに「スーパーカーの縮小版」といえましょう。
外したルーフは、フロントフード内のユーティリティーボックスに収納されていた。
なお、この状態だと、2名乗車時の荷物置場は、ほぼ、皆無となる。
右と左でカラーの違う「アシンメトリーカラースポーツレザーシート」。
「ドライバーズシートが際立つよう」にという思いを込めたデザインだという。
軽自動車らしからぬ、コストのしっかりと掛かった、良いシートだ。
潜り込むように、コクピットに座る。
ヒップポイントはとても低く、乗り込む際の足腰への負担は、キツい。
また、この試乗車はルーフがオープン状態だったので救われたが、ルーフを閉じた状態での乗り降りは、難儀しそうである。
試乗車は3ペダルの6MT。
尾車氏と私とで、交代で運転させてもらった。
ミドシップゆえ、フロントの荷重が軽いためだろうか、ステアリングは意外に軽め。
クラッチミートに気難しいところはなく、シフトレバーも明確にゲートが切られており、かっちりとしたシフトフィール。
現代のクルマなので、もちろん直進性に、不安は無い。
フルオープンで走ると風の巻き込みはかなり激しく、隣に座っているのが女性やカツラの方だったならば、怒られる確率は、かなり高い(^_^;)
だがしかし、サイドウインドウ&リアウインドウを閉じていれば、それはかなり低減され、空調がしっかりと効く状態となる。
そして、ミッドシップに積まれた、直列3気筒ターボエンジン。
これをMTで引っ張って走るのは、やはりなかなか痛快だ。
オープンで走行していると、エンジン音は盛大に響いてくる。
だが、こういうクルマなのだから、そのサウンドを楽しんでしまうのが、勝ちだ。
ただ、惜しいのは、その音質自体が、かなり「ガサツ」な感じであることだ。
いわゆる「ホンダミュージック」的なものを期待すると、裏切られるかもしれない。
なお、今回の試乗は、いつものように「市街地を4回左折する」といったお決まりのコースだったので、「ミッドシップによる重量配分や回頭性の良さ」を、実感することは出来なかった。
また、足回りは、はっきりと固めだった。
やはり、山道で走らせてみたいクルマである。
S660。純粋なドライバーズカーとしては、やはり面白い。
ホンダの気合というか、魂を感じる。
だがしかし、たとえ単身者であっても、このクルマ1台で全てをまかなうのは、かなり難しいだろうと思われる。
とはいえ、この時代にあえてこういうクルマを発売してくれたホンダに、エールを送りたい。
今苦戦しているF1も、何とか美酒を味わえるまで、参戦を続けてほしい。頑張れ、ホンダ。