江戸時代、田布施町は染め物が盛んだったとの記録があります。その染め物とは藍染めです。つい60年位ほど前にも田布施川沿いに染め物屋があったようです。その写真が残っています。また、織物をつくる会社もたくさんあったようです。また、綿やラミー(麻の一種)も昭和30年代まで栽培していたことが分かっています。そもそも江戸幕末頃の記録「防長風土注進案」を読むと、綿作りから反物までを分業して生産していたのです。その中で、当時の藍染めを再現して染め具合を確かめてみました。
染めテスト用の木綿布 どろどろに発酵させた藍液 藍液の中に布を浸す
まずは、藍染めのためには藍壺と呼ばれる大きく深い壺を使うのですが、今回は再現が目的ですので瓶を使いました。江戸時代の記録の通り、この瓶の中にすくも藍を入れました。そして、水を入れて撹拌しました。これ以降の作業が真骨頂なのです。藍染めができるような液体にするためには、この中に次の二つを入れます。一つは消石灰など液をアルカリ性にする成分。もう一つは発酵を促進するための栄養です。後者が必要であることをつい最近まで知りませんでした。藍染めとは本来、醤油やお酒のように微生物を扱う仕事だったのですね。
染めのテストのため、布をたくさん藍液に浸す
液をアルカリ性にしているためか、なかなか発酵が進みません。この瓶で発酵に約2週間かかりました。私の場合は匂いで発酵を確認しています。藍壺ほどの大きな壺になると、藍の花と呼ばれる泡のようなものが出てくるそうです。小さな瓶では藍の花は出ないようです。今のところ、匂いでしか確認できません。鼻が曲がりそうな嫌な特有の匂いです。
浸して2時間後取り出した布 水で布を洗う 青く染まった布
染めのテストでは、浸す時間と色の濃さが比例するか試しました。浸す時間を30分、60分、90分などと30分ごとに延長してみました。その結果、30分浸した布と4時間浸した布はほぼ同じ濃さでした。つまり、藍液に浸す時間は関係ないのです。次に、染めを何度か繰り返してみました。すると、繰り返した数に比例して色が濃くなりました。藍染め本の中に「何度か染め直す。」との記述のとおりでした。今回のテストの結果、3~4回染め直してようやく実用的な濃さの染めになることが分かりました。
今、畑で大量に藍を育てています。数日後、この藍の葉を収穫して来年の藍染めに活用する計画をしています。せっかくなら、江戸時代の田布施人が藍染めしていた方法で染めてみたいものです。
3回ほど藍液に浸した布 4回ほど藍液に浸した布
先日、私が10年位前に発酵させた藍液を捨てたのですが、その中から絹の布切れが出てきました。1年近く取り出すのを忘れていた絹布です。その絹が面白い色に染まっていました。緑色に近い青色なのです。焼き物と同様、藍染めも奥が深いようです。
なお、世の中に出回っている藍染めは、本来の藍染めとは違うようです。その成分はインド藍か合成藍とのこと。発酵させることなく一度で濃く染まります。古来の藍染めが廃れていく原因はここにあるようです。ヨーロッパにもアブラナ科の植物を使った藍染めがあったそうですが、インド藍の流入によって淘汰されてしまったそうです。
テストに使った布と染めの結果