すぷりんぐぶろぐ

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カレー、おごれよの衝撃

2009年12月07日 | 読書
 同年代人として注目している宮沢章夫の演劇をいつかは観てみたいという願いがあるのだが、なかなか実現しない。まあこういう人は他にもたくさんいるのだけれど…。
 それはともかく
 「『資本論』も読む」(宮沢章夫著 幻冬舎文庫)を読んだ。

 まず最初に、高校生の頃に「資本論を読みたい」と友人らと共に挑戦したことに驚いてしまった。そしてそれ以上に友人の一人が卒業して十年経ってから、「『資本論』、とうとう読み終えたよ」と言ったこと。何より、その次の言葉が衝撃的だった。これはドラマだ。

 「カレー、おごれよ」
 
 宮沢も「驚いた」と書いているが、そういう約束をする高校時代を過ごした者たちの歩む道の頑固さは生半可ではないことを思い知ったような気がした。
 こりゃかなわん、である。

 宮沢は「資本論」の解説を書こうとしたのではなく、「資本論」を「味わう」ために書いたと繰り返している。雑誌連載であり確かにらエッセイ風ではあるが、難解な本を味わうための基礎を持ち合わせているし、それを総動員しての著作なんだなと感じる。

 「資本論」などに少しも興味を持ってこなかった自分だったしもちろん理解などできなかったが、多少なりとも「労働」「商品」「貨幣」「剰余価値」などということにも考えを巡らすことができた貴重な読書だった。

 今さらではあるが、日常の行為の意味づけができることは新鮮ではある。
 それにしても、この書名の「も」は凄いなあ。
 これだけはという著書をできるだけ「遅く読む」ことは、案外いい方法なのかもしれない。何なら味わえるのだろうか。

 とてもとても『資本論』に手は出せないが、せめて『唯脳論』ぐらいならば…と思う。しかしいつの頃からか読みかけのまま書棚に収まっている。