すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

廃校地2010

2010年05月25日 | 雑記帳
 町内の山間部にある廃校地へ、週末ごとに三回続けて足を運んだ。
 学校を閉じるその最後の年に、一年間だけ勤めさせてもらった学校である。

 一回目は連休明けに桜を撮りに行った。
 『秋田の桜』という写真集の表紙を飾ったエドヒガンは、残念ながら満開をわずかに過ぎたが、まだまだ魅力のある姿をそこに見せていた。グラウンドを見下ろすソメイヨシノも元気だった。
 
 写真その1

 校舎も体育館も跡形なくなって久しい。わずかに校門と記念碑だけが、ここに学び舎が存在したことを知らせる。
 所在地の経度と緯度を記した標柱が、朽ちかけ倒れかけていた。昨年も一昨年も足を運んでいたが、そのことに気づいたのは今年。
 ああここに書かれた数字はもうすでに意味を失くし、木片とともにこの小高い丘の土になるのだなあ、と少し感傷的になる。

 校舎からグラウンドへ降りる小道に咲くツツジの蕾が美しく愛しく感じたのは二回目だった。

 写真その2

 しかし、次の週になって結局その花はひどく老いたような咲きぶりしか見せず、人の眼が傍にないことを痛切に感じさせる。

 三度目はこの日曜日。
 初夏といってもいい気候のなかで、少しばかりの山の恵みをいただいた後、記念碑の横に止めた車にもどった。

 傍にある一本の八重桜が満開を迎えていた。
 一陣の風が吹き、花びらを散らす。一人で浴びるには惜しいような花吹雪である。
 二度三度そんなふうに風が繰り返し、山際を駆け抜けて昇っていくように見えた。

 写真その3

 開け放した窓から車内のシートへ、花びらが舞込んでいる。
 簡単に払う気にもなれず、そのまま乗り込みエンジンをかけてゆっくりと坂を下った。