すぷりんぐぶろぐ

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ananを読む

2010年05月31日 | 読書
 いくら雑誌好きを公言していても、さすがに「anan」までは手を伸ばせない。

 その「anan」にリリー・フランキーが連載したエッセイが単行本になっていたので、ブックオフで500円で手に入れた。
 『マムシのanan』(マガジンハウス)
 
 しかし、こういう文章を書かせると本当にリリーは上手い。
 女性誌であるので男女の関係絡みが半分以上だが、そうした日常の言葉遣いや仕草一つ切り取って展開させ、笑わせ、考えさせ、すとんと落としてくれる。

 一番心の残るエピソードは「贈り物」というページであった。
 別れの予感を双方が持ちながらも、リリーは彼女が欲しかったと言っていた時計を貯金をはたいてプレゼントした。その腕時計をした彼女を見ることがないまま別れ、しばらく経って彼女から時計を売ってしまったと電話を受ける…「時計をあげて良かった」と振り返るリリー。
 ここにプレゼントの本質があるように思う。
 あれっ、こんな感じはもしかしたら『東京タワー』にあるのかな、と思わされた。

 「筆跡」「声」という項目があり、これらはかなり興味深い。
 表現を生業にしているリリーの一番濃い部分が出ているように思う。

 つまり、きれいな字より読みやすい字の方がいいということ。
 声によって人は判断され、声によって自分の人格を形成していくということ。

 ラジオ番組構成などの仕事をしてきて、多量の字や声に接してきた末の結論はなかなか重い。