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「覚悟」の人に触れる本

2015年07月15日 | 読書
 【2015読了】62冊目 ★★★★
 『教師の覚悟 授業名人・野口芳宏小伝』(松澤正仁 さくら社)


 『教師の覚悟』とは、また良く出来た書名である。
 いや、それは不遜な言い方かもしれない。
 こうとしか付けようのない、まさにこの書のためにあるような言葉が選ばれた。

 「覚悟」を辞書で引くと、次のような意味が書かれている。(明鏡国語辞典)

 「予想される良くない事態や結果に対し、それをそのまま受けとめようと心に決めること。観念すること。

 これは、まさしく野口先生仰るところの「結果幸福論」と通ずる。
 そして先生の半生が、幼少期から俗に言う苦労の連続だったことを改めて知るときに、「覚悟」はこうして培われると思わざるを得ない。

 ただ、昨日書いた「幸福の決定」条件に当てはめると、おそらく先生には「感性」「環境的要因」もかなり豊富だったと思われる。
それは紛れもなく、お父上を筆頭にしたご家族の力が大きい。
 個人的に心に残るエピソードは「厳父」。
 叔父さんからのお小遣いを拒み続けた先生に対する父からの手痛い叱責の場面だった。
 「素直」「感謝」というキーワードが心に迫ってくるシーンである。

 私も含めて、全国に数多くいるだろう先生を慕う者にとって、この本は「どこを切っても野口芳宏」である。
 半生記であるから当然と言うなかれ。
 つまり、読み手がとらえられる力量で、その内容を堪能できるという意味合いである。

 深く知っていらっしゃる方にとっては、その「滋味」を感じることができるだろうし、まだ浅い方であってもそれなりの面白さや痛快さを心に刻める。
 こんなふうに仕上げた著者の松澤先生の腕に敬服する。


 それにしても「覚悟」なのである。

 どんなに「感性」や「環境」が後押しをしても「活動と実践」がなければ、その一途によってコントロールしなければ、仕事にも家族にも「覚悟」を持つことはできない。

 自らの活動と実践によって切り開いてきた見事な人生。
 その具現者と間近に接する機会が得られた幸せを、感謝して噛み締めたい。