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辺境住民の提言と祈り

2017年03月19日 | 読書
 「元気のない社会」と聞くと何をイメージするだろうか。「社会」を実際の地名に置き換えてみてもいい。「みんなが使っている『元気』って、要するに『金が回っている』ということでしょう」…多くの人はそう考える。しかし結局「目先の金」に縛られ、元気を無くしたというのに…とそんなことが喋られている本。



2017読了29
 『辺境ラジオ』(内田樹・名越康文・西靖  140B)

 2010年に始まり2012年まで収録された鼎談的な番組。大阪の毎日放送AM、それも深夜枠というから、ライブで聴いた人は限られているだろう。内容はすこぶる面白い。テーマはあるが当然のごとく台本なし、アナウンサーである西氏が過激な発言をフォローしたり、まとめ的な言葉でつなげたりして治めている。


 6回分の収録と茂木健一郎氏が入った番外編で構成されている。時期として東日本大震災を挟むわけで、混乱期における身の処し方も語られるが、基本的なトーンは変わっていない。成熟社会と言われながら成熟できない個々に対して、「大人はどうあるべきか」が示されていると言っていい。俯瞰的、実際的な提言だ。


 一番顕著に示しているのは、内田、名越両氏が強調する「祈り」を実際に番組中に行ったことだろう。1分間の祈りという無音状態を作った(実際の放送では20秒以上は放送事故になるようで、BGM処理されたらしい)。LIVEであれば画期的だったろう。それは決してギミックとしてではなく、実に先進的な試みだ。


 その時期に話題となったマイケル・サンデル教授への批判も興味深い。「アメリカ人の知的欠陥」という言葉で、彼の「究極の選択」を迫るような手法に駄目だしをする。ここに登場するのが「予防」という発想。師と仰ぐ野口芳宏先生の言葉を思い出した。私達「辺境」に住む者が意識する大切なキーワードだと思う。