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桜と絵本と豆乳と

「ない」を課して暮らす

2017年05月19日 | 読書
 十年ほど前に「『ない』を誉める」と題して、ある教育雑誌に原稿を載せたことがある。「子どもを誉めるわたしの必殺技」という特集だった。子どもの「あきらめない」「わからない」そして「こたえない」「食べられない」を誉める技術について書いた。中味はともかく、発想や題、構成などは人目を引いたかなと思う。



2017読了53
 『人に強くなる極意』(佐藤 優  青春新書)


 教育とは異なる分野の新書だが、著者が「極意」と著した章立ては全部で8。全部「~~ない」と題している。「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」…読者対象はビジネスマン。行動決定の指針は、ネガティブリストが印象強いか。


 こういう題で書き進めながらも、最終的に「怒る」「びびる」…場面の大切さが強調され実にわかりやすい。例えば、日本が本当に「びびる」必要がある相手は、北朝鮮でも中国でもなくアメリカ合衆国であるという論は、考えれば当然だろうが、意識化できない日常を送っている。そういう見方を教えてくれる本だ。


 個人的に沁みたのは「侮らない」だった。最近ある事で少し恥ずかしい思いをし、少しの間心がとらわれた。よく考えてみると自分の向き合い方の問題だった。まさしく侮っていた。「『侮り』って人生の罠のようなもの」「『侮り』とは事後の概念」どちらの記述にも納得した。姿勢を正さねば、再び罠に足をとられる。


 「侮らない」だけでなく、章立ての「~~ない」を課した仕事(暮らしも同じだ)をしていくために、大事な共通事項をこの著から探すと次の二つになると考えた。「自分の力を見極めること」「誠実に精一杯向き合うこと」…02年の外務省騒動によって逮捕され長い拘留生活を送った著者の、経験値が集約されている。