「地方に行くと、『人材はみんな、東京にとられている』とよく言われます。それは新幹線を引くからとられてしまう。引かなければよかったんです。馬鹿ですね(笑)。」
論者のこの言葉をどう受け止めるか。
2017読了52
『日本の将来はじつに明るい!』(日下公人・上念司 WAC BUNKO)
保守系論客同士の対談。上のような「言いたい放題、しかもかなり痛いところを突いてくる」箇所がいくつもある。「アベノミクス」「イノベーション」「エネルギー問題」等と現在日本の状況と課題について、二人の価値観は非常に近いようだ。個人的に注目したのは第2章「本当に『地方』は再生できるか」である。
その中の一節が冒頭に引用した上念氏の言葉である。正直、馬鹿にされているようでいい心持ちはしない。新幹線や高速道路はいったい誰が何のために…と考えれば、現在の状況が出来てからそんなことを口にされても、と思う。そして同時に、それが典型的な事象になっていることは認めざるを得ないのも悔しい。
その発言に対して、日下氏がこう続ける。
「(地方は)人材育成の点で言うと『東京で活躍できる人材』をつくっているのが余計です。」
この指摘は重い。その言葉通りに意図せずとも、文部科学省がトップに立つ行政のしくみが、教員や保護者に浸食させている意識は大きいと思う。一教員として実践サークルをしていた頃、何がきっかけだったろうか、次の問いが浮かんで、自分の考えをまとめたことがあった。…「なぜ、地方に教育委員会は必要か」
遅ればせながら、自分はその時この国の構造的な問題に気づいたと言ってもいい。もちろん政治や行政の問題をある程度理解していたが、毎日の仕事を通して肌で感じ得たと言っていい。それからほどなくして、県学習状況調査が始まり、続いて全国学力テストが始まった。確実に「人材育成の方向」は仕上げられた。
論者のこの言葉をどう受け止めるか。
2017読了52
『日本の将来はじつに明るい!』(日下公人・上念司 WAC BUNKO)
保守系論客同士の対談。上のような「言いたい放題、しかもかなり痛いところを突いてくる」箇所がいくつもある。「アベノミクス」「イノベーション」「エネルギー問題」等と現在日本の状況と課題について、二人の価値観は非常に近いようだ。個人的に注目したのは第2章「本当に『地方』は再生できるか」である。
その中の一節が冒頭に引用した上念氏の言葉である。正直、馬鹿にされているようでいい心持ちはしない。新幹線や高速道路はいったい誰が何のために…と考えれば、現在の状況が出来てからそんなことを口にされても、と思う。そして同時に、それが典型的な事象になっていることは認めざるを得ないのも悔しい。
その発言に対して、日下氏がこう続ける。
「(地方は)人材育成の点で言うと『東京で活躍できる人材』をつくっているのが余計です。」
この指摘は重い。その言葉通りに意図せずとも、文部科学省がトップに立つ行政のしくみが、教員や保護者に浸食させている意識は大きいと思う。一教員として実践サークルをしていた頃、何がきっかけだったろうか、次の問いが浮かんで、自分の考えをまとめたことがあった。…「なぜ、地方に教育委員会は必要か」
遅ればせながら、自分はその時この国の構造的な問題に気づいたと言ってもいい。もちろん政治や行政の問題をある程度理解していたが、毎日の仕事を通して肌で感じ得たと言っていい。それからほどなくして、県学習状況調査が始まり、続いて全国学力テストが始まった。確実に「人材育成の方向」は仕上げられた。