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桜と絵本と豆乳と

小賢しいコミュニケーションなど…

2017年05月04日 | 読書
 「人間が考え出した最大の発明は?」と問われたら、なんと答えるだろうか。ペン、時計そして電気や車、TV、PCという道具を浮かべる人は当然いる。またそれとは違う、組織やシステムといったソフト的なことだと考える人もいるだろう。この本で語られたのは「役割分担」ということ。結構いい線かもしれない。

2017読了46
 『つむじ風食堂と僕』(吉田篤弘  ちくまプリマ―新書)


 「なんか、こお、いい物語」と題して『つむじ風食堂の夜』という本の感想を書いたのは去年の暮。そのイメージがあり、題名と著者からすぐぴんと来て手に取った。しかしそれは新書しかも「プリマ―」だ。主たる対象は青少年だろう。ただプリマ―に良書が多い事も承知している。読了、やはり素敵な一冊だった。


 12歳の「僕」は、隣町にある「つむじ風食堂」へ路面電車に乗って週に2回ほど通う。そこに集う大人たちと会話し、自分の将来に様々な考えをめぐらす内容だ。話の中心は「仕事」。「僕」に対して、様々な職業の大人が各自の思いや価値観について語りだし、「僕」は時間の流れに気づき、「物語」を考え始める。


 大人はそれぞれ就いている仕事について、意義を知り、また誇りを持ち、日々取り組んでいる。ただ現実においてそこに頼るだけでは難しい。例えば登場する宅配便のシマオカさんは、荷物ではなく「思いを届ける」ことを強調するが、「使い走り」のような状況の中で、どこへ意識を向けて励むか。辻で立ち止まる。


 (つむじ風食堂には出ない、ワラビのおひたし、初物でした)

 著者の「あとがき」を読み、ああこの人もそうだ、と思い当たることがあった。すぐれた表現者、クリエイターは、子どもの頃に何事かに没頭している。それが表面上は冴えないように見えても、蓄積されている時間こそがエネルギーになる。それが「想像力のレッスン」だ、小賢しいコミュニケーションなど後回しだ。